【DB6を電動化】純EV版アストン マーティンDB6へ試乗 未来を走るクラシック
公開 : 2020.08.05 10:20
マフラーやメーター類も残されている
マフラーも残されている。可能な限り、オリジナル状態の見た目を保つために。左側の給油口を開くと、電動の心臓に移植されていることがわかる。充電用ソケットが付いているからだ。
レザー張りの内装も同じ。クロームメッキのリングが付いた、スミス製のメーターが今まで通り並んでいる。でも、まだ実際に機能するのはスピードメーターのみ。
スパイアーズによれば、残りのメーターも純EVで該当する内容を割り振り、機能させるという。試乗車には搭載されていないが、ヒーターも実装される予定だ。
運転は、これ以上簡単にはならないだろう。マニュアルのトランスミッションが残っているが、基本的に走行時は、クラッチペダルを踏んで変速する必要はない。
試乗車の場合、2速を選べばシングルスピードの純EVのように運転ができる。スタートダッシュは、予想より鋭いものではなかった。ピットレーンからアストン マーティンらしく元気に発進させるには、アクセルペダルを深く踏み込む必要がある。
電気モーターは、回り始めから巨大なトルクを発生させる。だが、このDB6の場合は、トラクションコントロールの必要性は感じなかった。
走り始めると、スルスルと滑らかに加速が続く。最初のコーナー手前で80km/hに届いた。パワートレインの健康状態を保つために、アストン マーティンから指定されていた制限速度だ。
オリジナルのDB6にできるだけ近づけたい
個人的には、アストン マーティン製の直列6気筒エンジンを搭載するDB6ほど速くは感じなかった。かつてのような音響が、一切聞こえないからかもしれない。たくましいストレート6が放ったサウンドは、穏やかな電気モーターの唸りに置き換わっている。
アクセルペダルを離すと、サーキットの路面に粘着テープでも付いているかのように減速する。ブレーキペダルを踏む必要がないほど、強力な回生ブレーキが働くためだ。
スパイアーズによれば、完成した仕様では、ここまで積極的な回生ブレーキの設定にはしないという。できるだけ、オリジナル・モデルのドライビングマナーに近づけたいとしている。
せっかくシフトレバーが残っているから、変速を試してみる。2速から3速へ変えてみたが、加速感は同じだった。電気モーターには意味のないことのようだ。
アストン マーティンの狙い通り、それ以外の動的性能から得られる体験は、オリジナルのDB6と変わらないと感じた。現代基準で考えれば、グリップ力は穏やかで、ボディロールは大きめ。しかしシャシーのマナーは良く、ショートトラックをかなり速めのスピードで周回できる。
アストン マーティンらしく、洗練もされている。年代物のヴォランテだが、内装トリムや構造からのきしみ音やガタツキもない。