【SUV隆盛なのに……】なぜ三菱パジェロは、日本仕様の生産を終えるのか? コアなファンが離れ懸念
公開 : 2020.07.31 05:50 更新 : 2021.10.22 10:15
なぜパジェロは追い込まれたのか?
パジェロは1990年代の前半までは絶好調に売れたが、その後は人気が急速に下がった。
日本では1994年にRAV4、1995年にCR-V、1997年にはハリアーという具合に、前輪駆動をベースにした乗用車感覚の強いシティ派SUVを投入して、人気が移ったからだ。
パジェロのようなオフロードSUVは、耐久性が高く悪路走破力も優秀だが、前輪駆動ベースのシティ派SUVに比べると、ボディが重くて高重心になる。
従って動力性能、走行安定性、燃費性能などが良くない。
小回りの利きも悪く、床が高いから乗り降りもしにくい。要は日常的な使い勝手に不満が生じやすい。
そこでユーザーは、急速に充実するシティ派SUVに魅力を感じた。
シティ派の欠点は、肝心の悪路走破力がオフロードSUVに比べて低いことだが、日本の一般ユーザーが乗り入れる範囲に本格的な悪路はほとんど存在しない。
雪道ならシティ派SUVでも十分に走行できるから、普及が一気に進んだ。
オフロードSUVのサファリ、テラノ、ハイラックスサーフ、ビッグホーンなどは、2010年までに国内販売を終了している。
またこの時期の三菱は社会的にも厳しい状態に陥った。
2000年代リコール 燃費偽装も
2000年代にリコール問題、2016年にはeKワゴンとデイズの燃費偽装問題も発覚したからだ。
1999年における三菱の世界生産台数は171万9000台で、国内販売台数は58万6000台(乗用車は32万6000台)であった。
これが2005年は世界生産台数が136万3000台、国内販売台数は24万4000台(乗用車は16万3000台)に下がった。
2010年は世界生産台数が117万3000台、国内販売台数は17万6000台(乗用車は13万2000台)だ。
2015年は世界生産台数が121万9000台、国内販売台数は10万2000台。2019年は世界生産台数が136万9000台、国内販売台数は10万3000台になっている。
国内の販売落ち込みが特に大きく、1999年には乗用車だけで32万6000台を販売していたのに、2019年は国内全体で10万3000台にとどまる。
これに伴って、以前は700か所に展開されていた国内販売ディーラー店舗数も今は600か所弱に減った。
このように三菱車全体の販売減少と、オフロードSUVの人気衰退、シティ派SUVの隆盛が重なり、パジェロの2018年における国内販売台数は800台以下まで低下している。
最盛期に比べると10%を下まわり、2019年8月に生産を終えた。
以上の推移を振り返ると、パジェロは三菱の基幹車種として、ギリギリまで生産を続けていたことがわかる。
テラノやハイラックスサーフが消滅していく中で、パジェロはランドクルーザーなどと一緒に、日本のオフロードSUV市場を支え続けた。
パジェロが生産を終えたのには、もう1つの理由が考えられる。