【BMWとポルシェを超える評価】スープラ vs BMW M2 vs 718ケイマン比較試乗 中編
公開 : 2020.08.09 11:50 更新 : 2021.03.05 18:45
価格上昇でドイツのプレミアム・ブランドと対峙することになった、トヨタ・スープラ。比較するのは、定評あるBMW M2コンペティションとポルシェ718ケイマンです。スープラは、両車を抑えることが可能なのでしょうか。
サウンドと8速ATが足を引っ張る
力任せに、驚くほどの加速度で突き進むことも造作ないトヨタ・スープラ。低回転域から中回転域にかけては、M2コンペティションに引けを取らないパンチ力を楽しめる。
中間レシオでクロスした8速ATと、切れの良いアクセルレスポンス、マルチリンク・サスペンションが支える力強いトラクションが相乗し、気持ちが高ぶる感覚へ浸れる。それだけに、サウンド面でスープラの輝きが弱いことが残念。
レッドゾーンの500rpmほど手前からフェードアウトするものの、エンジンは気持ちよく吹け上がる。それでも、運転中に聞こえてくる音響は、どこか人工的。不快な音ではないが、スープラの成り立ちを考えると、もっとリアルでダイナミックな音色を期待してしまう。
またM2コンペティションに搭載される、BMW M製のS55型直列6気筒ユニットのように、リミットまで刺激的に吹け上がって欲しいことも確か。高回転域での荒々しさと、中毒的なメカニカルノイズが羨ましく思えてしまう。
スープラのトルクコンバーター式ATも、M2のデュアルクラッチATのように、キビキビと動いて欲しいところ。ATとしては充分にスムーズでクイックなシフトアップを披露するが、シフトダウン時はクルマのバランスを崩すかのように、もたつく場面がある。
スープラの8速ATは、純粋なドライバーには受け入れがたいかもしれない。M2のシームレスな変速感や、ケイマンのヒール&トウでのシフトダウンを味わってしまうと特に。
細いトルクと冴えないアクセルレスポンス
トランスミッションの仕上がりでいえば、718ケイマンが積む6速MTが白眉。正確で短いストロークが、操る喜びを与えてくれる。左手と左足を忙しく操作する必要はあるが、クルマとの一体感を楽しみたい場合、むしろ好都合だといえる。
当初、一部からは718ケイマンのフラット4は暖かく受け入れられなかった。しかし、ターボが生む太いトルクで、不満ない動力性能を与えていたことは間違いない。
その後、ガソリン・パティキュレート・フィルターが追加されたこともあり、2.0Lのフラット4は少し勢いが削がれた様子。ポルシェは、38.6kg-mの最大トルクを2150rpmから発揮すると主張するが、今回の試乗車は3500rpm以下ではその数字を実感しにくかった。
タイトなカーブが点在する南ウェールズの道では、ギアを1段落としただけでは不十分。2・3段は一度に落とさないと、満足できるダッシュ力は得にくい。その間に、スープラとM2コンペティションは、すっかり速度を乗せきっている。
動的な不満は、おっとりしたアクセルレスポンスで強調されてしまう。スポーツ+モードにしても、ダイレクト感は乏しい。ブレーキが一瞬固着しているのでは、と勘違いするほど。また、スポーツ・エグゾーストを組んでいても、排気音は没個性気味だった。
4000rpmを超えればボクサー4は目を覚まし、力強くケイマンを引っ張り始める。そのまま7000rpm目がけて爽快に吹け上がるのだが。