【ほぼ、世界最高のFRマシン】BMW M2 CSへ試乗 F87型最後を飾る限定モデル 後編
公開 : 2020.08.07 10:20
歴代、BMW MのCSといえば、最もエキサイティングなモデルであり続けてきました。では、大きく価格が上昇した限定モデル、M2 CSの仕上がりはいかに?英国編集部がピリリと辛口評価を下します。一般道で試乗しました。
コーナーで実感するコンペティションとの差
BMW M2 CSの少し硬めの乗り心地と、ガッシリとしたステアリングホイールの操舵感が組み合わさり、ドライビング体験の刺激度は高い。ステアリングやエンジン、サスペンションの設定が、最も快適側の設定でも。
一方で、M2コンペティションとの違いが、大きいわけでもない。その差を感じるには、少し長めに高速でドライブする必要がある。
M2コンペティションは、ソリッドマウントされたリア・サブフレームとボールジョイントのサスペンションによって、アクティブなリアタイヤの挙動を引き出していた。さらにM2 CSでは、リア周りの安定性が高められている。
M2 CSで、サルーンのように背の高い箱型ボディの存在を感じるのは、相当な速度域でチャレンジングな道を攻めたときくらい。路面の隆起部分などを通過した際、ポルシェ・ケイマンGT4より、サスペンションがボディをなだめるのに若干の時間を要するようだ。
あくまでも限定的な場面で、残りの道は、周囲を驚かせるような速度と処理力で突き進む。M2 CSの違いを明確に感じられるのは、コーナーへの進入時だろう。
アクティブMディファレンシャルによって、驚異的な精度と機敏さで、フロントノーズの向きを変えていく。リアタイヤが不安定になるほどシャープではない、絶妙のバランスだ。ミシュラン製のタイヤと、徹底的に引き締められた姿勢制御もそれを支えている。
世界最高に仕立てられたFRモデル
コーナリング中も、M2 CSの素晴らしさを楽しめる。常に予測可能な挙動で、いつまでも美しい姿勢で、テールスライドを許してくれる。なんと楽しいのだろうか。
ESPのMダイナミック・モードの設定も絶妙。ドライバーが望めば、不満を感じないだけの自由度を与えてくれる。
豊かなパワーとトルクが、常にリアタイヤへ伝わるという一貫性、軽快なステアリングフィールと、シャシーバランス。すべてが融合し、シンプルにクルマの運転を楽しむ、という喜びに浸っていられる。
ケイマンの方が、オフスロットル時に微妙なライン調整が可能で、硬いサスペンションに対する依存度は低い。それでも、パワフルなフロントエンジン・リアドライブというパッケージングを、世界最高に仕立てているのは、BMW M2だといえる。
ただし、F87型のM2コンペティションとミシュラン・パイロット・スーパースポーツとの組み合わせが、ベストだったとも思う。そこがネックだ。
BMWがポンとM2 CSを持ってきて、価格は7万5320ポンド(1016万円)ですと発表したのなら、なるほどと感服したに違いない。一般道での走りはセンセーショナルと呼びたくなるほど素晴らしく、サーキットでも充分に攻め込める。
しかしわれわれは、M2コンペティションを知っている。価格差を無視することはできない。ハードコアな威圧感や機敏性は多少劣る。でも、楽しさと満足度でいえば、引けを取らないのだ。