【待ち焦がれたグランドツアラー】新型フェラーリ・ローマへ試乗 620psの2+2 前編
公開 : 2020.08.08 10:20 更新 : 2021.08.05 08:09
フロントノーズにV8ツインターボを搭載するゴージャスなクーペ、フェラーリ・ローマ。2+2のグランドツアラーとして、優れた実用性にも焦点が向けられています。期待の最新モデルを、英国編集部がイタリアで評価しました。
不在だった550マラネロにかわる存在
鋭い質問を投げかけるのは、誰しも勇気が必要なものだ。多くの人から愛され販売も好調だった、550マラネロのようなクルマをなぜ作らなくなったのか、フェラーリに問う人はいなかったのかもしれない。数年前までは。
最新のフェラーリ・ローマが誕生した理由は定かではない。少なくとも、トラクタブル・ハードトップのポルトフィーノが採用する、新しいフロントエンジン・プラットフォームで、別のモデルを生み出したいという経営側の意向があったことは確かだろう。
デザインチームの熱意も、相当に高かったはず。クラシックでエレガントなクーペモデルを、ショールームへ復活させるチャンスなのだから。
筆者は、ローマ誕生で大きな手腕を発揮したのは、経営部門のジョバンニという人物だったのではないかと考える。彼は表舞台に姿を見せることはほぼないが、エクセルの集計表とにらめっこをしながら、次の550マラネロを問い続けてきた1人。
1996年に発表されたフェラーリ550は、フロントエンジンのグランドツアラーとして、モダン・フェラーリを象徴する高水準な1台だった。実用的でありながら、スマートな見た目。速くまとまりが良く、魂が宿り、一般道で素晴らしい走りを披露してくれた。
355以来、最も美しいスタイリング
550以降、フロントにV型12気筒エンジンを搭載した後継モデルは絶えていないが、激しさと価格は増す一方。日常的な乗りやすさや、近づきやすい操縦性といった魅力は薄れていた。
際限なく、フェラーリのスピードとグリップ、ノイズは高められていった。スリルは、少し過剰とすら感じるほど。
1950年代から1960年代にかけて、V型12気筒を搭載したグランドツアラーの傑作を生み出してきたフェラーリ。550のようなクルマを復活させるには、マインドの飛躍も必要だったのかもしれない。
ミドシップ全盛のモダン・フェラーリ。単にV8ツインターボ・エンジンを搭載する、ポルトフィーノのクーペ版では、高い人気は得られないとも思う。
難しい話しはこれくらいにして、新しいローマを見てみよう。どんなモデルなのか、興味は止まらない。充実装備で豪奢な新世代コクピットを得ている。
スタイリングは、フェラーリ社内のデザイン部門による、素晴らしい作品だと思う。フェラーリだけでなく、このセグメント全体における、重要な新モデルに相応しい。
458以来、いやF355以来、ローマは最もスタイリングに長けた量産フェラーリだとさえ感じる。見事に整ったプロポーション。美しくピュアな曲面で構成され、威圧感はほとんどない。ディテールも素晴らしい。
フォルムを反映するようなデザインで、カーボンファイバー製のスカートやフロント・スプリッターが下部を引き締める。水盤にボディが反射した姿のようにも見える。知的にも感じる。