【詳細データテスト】ポルシェ・タイカン 正真正銘ポルシェのスポーツカーでありドライバーズカー 重量を感じさせない走りと快適性 デジタル偏重の内装は使い勝手に劣る
公開 : 2020.08.08 11:50 更新 : 2021.02.10 17:27
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
EVには電気モーターとバッテリーをはじめ、ガソリン車とは異なるハードウェアが必要だ。それらを一般的な乗用車が備えるスペースに、ガソリン車より車体を大きくしたり、実用性を低下させたりせずに積み込まなければならない。
この10年ほどで、第一波となる電動化に携わってきた設計者たちは、徐々にその不利を解消しつつある。それでも、完全に克服できているわけではない。
しかしタイカンは、まずその点からして異なっている。このクルマは、ポルシェのラインナップにおいて立ち位置の近いパナメーラより全長は短く、ルーフは低い4ドアのスポーツクーペとして成立しているのだ。
それを可能にしたのが、バッテリーの高度な設計である。EVに用いられるスケートボードのような駆動用バッテリーは、その上に乗るキャビンの容積を侵食してしまいがちだ。
ところがタイカンの93.4kWhリチウムイオンバッテリーパックには、ポルシェがフットガレージと称する、足を置くためのくぼみが設けられ、前後席とも低くすることに寄与する。キャビンとフロアを明確な2段重ねにせず、乗員とバッテリーが同じ階層を共有できるよう目指した設計は、競合する大型EVでもこれまでなしえなかったものだ。
電動化技術の革新性は、まだまだこれにとどまらない。タイカンは量産乗用EVとしてはじめて、800Vシステムを採用。これにより。まずは2基の電気モーターへ電力を供給するケーブルを、ほかのEVより細く軽いものにすることができる。
さらに、有償オプションではあるが最大270kWhの急速充電に対応し、ゼロからのフル充電が30分程度でできるようになった。また、減速時のエネルギー回生も早い。同じエネルギー量なら、2011年の987型ケイマンRが、7000rpmで最大加速した際に消費するより短い時間で、体幹はそれを回収できるはずだ。
2基の交流同期モーターは、前後アクスルに1基ずつ設置される。ステーターに長方形ワイアを組み合わせたヘアピンコイルを採用し、エネルギー密度を大きく高めた。
フロントはオープンデフを介してダイレクトに、リアは2速ATとトルクベクタリング機構を備えるeデフを介して、それぞれのアクスルを駆動。ターボSグレードでは最高出力761ps、最大トルク107.0kg-mを謳うが、フルに発揮されるのはローンチコントロールを用いて発進する短い間だけだ。
サスペンションは、車高調整可能な3チャンバー式エアスプリングと、アダプティブダンパーを採用。スタビライザーもアクティブ制御で、ターボSではさらに、アクティブ四輪操舵も標準装備される。
ターボSには、重量削減に寄与するカーボンセラミックブレーキも標準装備。シャシーはアルミとスティールの混成だ。それでも、これは予想どおり、非常に重たいスポーツカーだ。前後重量配分はほぼパーフェクトなバランスで、テスト車の車両重量は公称値を60kg上回る2355kg。これより重いポルシェは、プラグインハイブリッドのカイエンのみだ。