【詳細データテスト】ポルシェ・タイカン 正真正銘ポルシェのスポーツカーでありドライバーズカー 重量を感じさせない走りと快適性 デジタル偏重の内装は使い勝手に劣る
公開 : 2020.08.08 11:50 更新 : 2021.02.10 17:27
操舵/安定性 ★★★★★★★★★★
2020年現在、どれくらいのウェイトまでなら、運動性能における信頼性の基準を緩めることなく一線級のドライバーズカーとなりえるだろうか。オートカー読者なら、1500kgくらいだと答えるのではないだろうか。
だが、このとんでもなく重いタイカン・ターボSから降りたばかりのひとに同じ質問をしても、すぐに答えを聞くことはできないに違いない。きっと、彼らは別のことで思考が占められているはずだからだ。
ここまで重いクルマがどうやったらこんな驚くほど落ち着いて精密なハンドリングやナチュラルなシャシーバランス、滑らかな身のこなしを実現できるのか、彼らはそれを推測するだけでいっぱいいっぱいだろう。ふつうならそれらは、1t近く軽いクルマでないと味わえないような類のものだからだ。
サーキットでもそうだが、とりわけ公道において、このクルマがみせるハンドリングは驚異的というほかない。これほどのウェイトも、楽々とコントロールしてしまう。その重さを踏まえた予想は、完全に裏切られる。
とはいえ、バンプやアンジュレーションを乗り越える際にもしなやかに吸収できる。それでいて、どこまでも水平に、ボディの動きの頂点を保ち続け、鼻先の向きを変える挙動は驚くほど安定していて、しかも鋭い。
シャシーは高い速度で大きな突き上げを受けると、わずかばかり浮き上がるようなところもみせる。とはいっても、それはマッチョな建築作業員が、ドロドロのセメントで満杯のバケツを胸の高さくらいまで持ち上げているようなイメージだ。邪魔しようとしても、バケツの中身を一滴もこぼさない感じがする。
ステアリングの手応えはパーフェクトで、グリップレベルをしっかり知らせ続けてくれるだけのフィールがある。正確さや信頼できるリニアさとフィードバックのブレンドはポルシェではおなじみのものだ。それでいて、アクティブロールキャンセラーや四輪駆動/四輪操舵の好ましくない副作用は遮断しようと精一杯してくれる。
感じとれるのは、淀みない精密さ、歯切れのいいターンイン、絶賛に値するコーナリング中のバランス、そしてアペックスを過ぎて加速する際のトラクションとスタビリティ、安定した挙動の調和ぶり、とにかくそれに尽きる。
エアサスペンションは自動で車高を調整するが、減速帯や高い縁石、急勾配のドライブウェイなどに差し掛かると、ときとして走行モードをチェックする必要に迫られる。
もっとも車高の低いレンジモードでは、うっかりアゴを擦ってしまいかねない。また、速度を上げて走る際に、乗り心地がより落ち着いているモードは、ノーマルかスポーツだ。