【ミッドセンチュリーの美】コンチネンタルでパーム・スプリングスを流す 前編

公開 : 2020.08.22 08:50  更新 : 2020.12.08 08:35

運転すると素晴らしいクルマだと実感

「カリフォルニアの海岸で開かれた、自動車ショーへ友人と訪れました。海沿いのカンブリアやサン・ルイス・オビスポの辺りには、素晴らしい道が伸びています」。経緯を振り返りながら、メンラッドはキーを捻り、V8エンジンを目覚めさせた。

「運転してみると、素晴らしいクルマだと実感したんです。スタイリングも含めて、すべてが。コンチネンタルの売り手を紹介してくれたのも、その友人。オーナーはかなりの量のコレクションを保有しており、見事なレストアが施してありました」

リンカーン・コンチネンタル(4代目/1961年〜1969年)
リンカーン・コンチネンタル(4代目/1961年〜1969年)

「売り手がコンチネンタルを買った時も、オリジナル状態で1オーナーだったそうです。運転はせずに、美しいクルマとして鑑賞していたと聞いています」。メンラッドが続ける。

「わたしが引き継いだ時は、長く走らせないでいたことが原因の、機械的な不具合が少なくありませんでした。サスペンションとステアリング、ブレーキなど。選べるオプションがすべて搭載されているような状態で、ラッキーでしたね」

「整備は良くされていたようです。電動アンテナなど、珍しいオプションも付いています。ステアリングコラムの下にあるボックスは、原始的なクルーズコントロール。直すには費用がかかりすぎますが、カッコいいので残してあります。夜に電飾が光るんですよ」

重たい助手席側のドアを開ける。インテリアの状態も相当にきれいだ。見事に染め上げられたレザーに、カラー・コーディネートされたカーペット。ドアやメーターパネルにあしらわれたステンレス製のアクセントが全体を引き締める。

巨大なトルクでストレスフリーな走り

カリフォルニアでは一般的だった、ウォルナットは見られない。「多くの人がウッドトリムを選んだようですが、わたしはプレーンな見た目の方が好きですね」

静かに、リンカーンが表通りへ出る。流れへ合流すると、サスペンションが円を描くように緩やかに動く。かなりの大きさにも関わらず、エルウッドが与えたデザインは大人しい。巨大なトルクの波に乗るように、走りはストレスフリーだ。

リンカーン・コンチネンタル(4代目/1961年〜1969年)
リンカーン・コンチネンタル(4代目/1961年〜1969年)

パワーステアリング・ポンプが小さく鳴る。イースト・タキッツ・キャニオン通りへおおらかに曲がる。コンチネンタルが目指すのは、この町でも最も印象的な建物。オーナーのメンラッドも大好きな、シティホールだ。

設計したのは、スイス生まれの建築家、アルバート・フライ。幾何学的な造形を、工業的な建築へ見事に融合させている。最大の特徴は、穴の空いた屋根が大きく張り出すメイン・エントランス。

張り出した屋根を貫通するように、3本のヤシの木が生えている。リンカーンの背景としても完璧。一部の壁面は、切断された大きな配管が積み重ねられ、空調機能を果たしている。美しくもあり、実用主義的でもある。

この特徴は、パーム・スプリングス付近の公共建築にも多く用いられた。地元の運輸局にも用いられている。

建築的な美しさにも関わらず、運輸局の過去は明るいだけではない。ドライブスルーのエントランスを持つ装飾的な壁は、シートで覆われている。一時は、ホームレスのケアに転用された時期もあったそうだ。

この続きは後編にて。

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