【すべてが先代以上】最新8代目 フォルクスワーゲン・ゴルフGTIへ試乗 前編
公開 : 2020.08.13 10:20
ライバルと並ぶと控えめな245ps
ソリッドな印象は漂うが、ダッシュボードに用いられているプラスティックの質感は、一部で少し安っぽい。インテリア全体としては、従来と比較すれば顕著な変化でもある。
GTIを主張する要素も散りばめられている。連綿と受け継がれてきた高性能モデルであることを、車内からも感じ取れるように。
ヘッドレストと一体化された標準のスポーツシートは、調整幅も大きく、サポート性も良い。ステアリングホイールはレザー巻きで、スポークにはGTIのロゴと赤い差し色が入る。通常のゴルフより握りも太い。ペダルはステンレス製となる。
フォルクスワーゲンによれば、標準のGTIとして、最新の8代目は過去最強だと主張する。しかし最高出力は、近年のこのクラスでは控えめといえる245ps。2.0Lエンジンがアップデートを受けているとしても、どこまで興奮するドライビング体験が得られるのか、疑問もなくはない。
何しろ、フォード・フォーカスSTは276ps、ルノー・メガーヌRSは279ps、ホンダ・シビック・タイプRは320psもある。ヒュンダイi30Nでも、274psを得ている。
確かにライバルの前輪駆動ホットハッチと並ぶと、パワーでは劣っている。でも、EA888型4気筒ターボの回転は、驚くほど鋭い。
最大トルクは1600rpmから4300rpmに渡って、37.6kg-mを発生。突出した低中回転域での柔軟性を備えている。
アクセルペダルを踏み込んだときのパンチ力は、感心するほど強い。0-100km/h加速6.3秒、リミッターが効く最高速度249km/hという数字も、優れた性能を示している。
エンジン以上に好印象なシャシー・システム
新しい磁力式インジェクターは、燃料の噴射圧力を200barから350barへアップ。燃焼プロセスも改良を受け、低回転域でのスロットルレスポンスを高めつつ、6800rpmまで軽快に吹け上がる。改良前の同ユニットを搭載した先代より、瞬発力が強化された。
エンジン以上に強い印象を与えるのが、先代から25psと1.5kg-m増しのエネルギーを路面へ伝える能力。フォルクスワーゲンがXDSと呼ぶ、電子制御リミテッドスリップ・デフのプログラムが見直され、発進時の鋭さを高めている。
しかも、手に負えないトルクステアや、だらしないホイールスピンとは無縁。路面が乾燥していれば、タイトコーナーの立ち上がりなど、加速時のトラクションの掛かり具合で明らかな向上を体感できる。
このデフをバックアップするのが、VDMシステム。XDSおよびDCC(ダイナミック・シャシー・コントロール)などを電子的にネットワーク化し、各システムの反応速度を可能な限り短くしている。
ただし、良いことばかりではない。大型化された触媒コンバーターとガソリン微粒子フィルターによって、サウンド面でのアピール力は削がれてしまった。サウンド・アクチュエーターを備えるが、従来モデルほどの純度や刺激は得られていない。
スポーツ・モードを選ぶとエグゾーストノートの荒々しさは増す。だが音色は単調で、高速道路を長時間走るような場合には、飽きてしまうだろう。
この続きは後編にてご紹介しよう。