【F20型の可能性を引き出す】バーズBMW M140iへ試乗 FRで楽しむ430ps
公開 : 2020.08.16 10:20
英国バークシャー州を拠点とする、BMWチューナーのバーズ社が手掛けた、コンパクト・ハッチバック。先代、F20型のホットハッチにスパイスを効かせ、絶妙な味わいに仕上げました。一般道での英国編集部の評価はいかに。
もくじ
ー最初の50mで感じ取れるクルマの良さ
ー直6と3ペダルを備える、後輪駆動の準M
ー操縦性を高めつつ、日常性も犠牲にしない
ーM2コンペ並みに興奮できるハッチバック
ーバーズBMW M140i(英国仕様)のスペック
最初の50mで感じ取れるクルマの良さ
自動車評論家はしばしば、「最初の50m」の印象を話すことがある。発進直後から、クルマの備える特徴の断片を感じ取ることができるからだ。
見逃せない部分から、多くの小さな持ち味まで。ドアを開きシートへ座り、アクセルを踏んでギアが2速に入る頃までに、少なくないことが見えてくる。
多くのユーザーにとっては、取るに足らない50mだと思う。しかし、初めの50mの感触が良いクルマは、往々にして良いドライビング体験が得られる。そうでない場合は、逆だ。
今回試乗したバーズBMW M140iは、例外的に素敵な50mだった。バーズ社のことを理解している読者なら、特に驚かないか仕上がりかもしれないけれど。
一見すると、中古のBMW 1シリーズと大きな違いはない。しかしその内側には、入念に手が加えられた、サスペンションとエンジンが潜んでいる。
BMW製の直列6気筒エンジンは、バーズ社の手によって430psと55.4kg-mにまで増強。オープンデフは、クワイフ社製のリミテッドスリップ・デフに置き換わっている。
バーズ社が目指しているのは、ポルシェを破れるホットハッチではない。多くの理由でしまい込まれた標準1シリーズの可能性を、引き出すこと。
単に走行性能を高めただけではない点も特徴。メカニカルな質感の向上や、精度の高い操縦性、季節を通じた乗りやすさなどにも焦点が向けられている。
直6と3ペダルを備える、後輪駆動の準M
ロンドンの東、バークシャー州でBMWのアップデートを手掛けて、20年弱の経験を持つバーズ社。最近はAMGにも範囲を広げている。
そんなバーズ社がF20型の先代1シリーズ、M140iをいま取り上げる理由。それは、直列6気筒エンジンと3ペダルを備える、純粋な後輪駆動の「準M」だからだ。
英国のディーラー網からすべてのF20型M140iを入手し、アップデートしたいとすら考えている。運転技術も問われるが、素晴らしい個性と能力を秘めたドライバーズカーへ改めるめに。
標準のM140iは、開発が充分とはいえなかった。パワフルなエンジンに、サスペンションやシャシー設定が追いつけていなかった。
バーズ社の手によるM140iでは、ショートストローク化され、適度な抵抗感のあるシフトレバーと、重みを増したクラッチペダルの操作が心地良い。
低回転域では、エンジンノイズからその変化を伺うことができない。しかし、ターボチャージャーの発するトルクが発進加速のマナーに違いを与えている。かなり力強い。4気筒では不可能な感触だ。
ステアリングフィールは、もう少し改められるだろう。64km/hを超えると改善するものの、それ以下では軽すぎ、路面の感触も得にくい。
バーズ社はフロントのトレッドを広げることで、スクラブ半径と呼ばれるタイヤとサスペンションの位置関係を見直している。一般的にネガティブ・スクラブの場合、高速域での安定性につながる。しかし英国郊外の道のように、機敏さが求められる場面では有効ではないためだ。