【詳細データテスト】メルセデス・ベンツAクラス ドライブトレインの制御は未熟 運動性能は快適性の犠牲に 静粛性は改善の余地あり
公開 : 2020.08.15 11:50
走り ★★★★★★★☆☆☆
PHEVにはよくあることだが、A 250eのパワートレインは、クルマ付きの好奇心を刺激する。ハイブリッドモードでは、かなりパワフルで、容易に引き出せるトルクもかなりのもの。
使いやすいパワーとトルクを発生する電気モーターは8速ギアボックスよりも上流に設置される。そのため、より高い速度ではこのクルマのギアリングの恩恵を得ることができる。
これにより、エレクトリックモードでも優れたパフォーマンスを発揮。法定速度に達する程度までのスピード域で使えるそれは、とくにパワー不足を感じさせず、ドライバーが意図的な操作をしなければエンジンが回ることはない。
しかしながら、クルマがどう動いているかなどお構いなしのドライバーにとっては話が異なる。単にうまく機能してほしいだけなら、A 250eには少なからぬ失望を覚えるかもしれない。
ときとして、ギアボックスは変速がスローで、バックでの駐車や切り返しの際には、リバースへの切り替えの遅さにイライラすることもある。
また、エンジンが停止しているときの洗練性が際立つ作動ぶりと、突発的にエンジン始動が必要となった際に発するノイズとがあまりにも対照的。高級感のある静けさを叩き壊し、クルマがまったくの別物になったように感じるほどだ。
残念なことに、メルセデスがこの1.3L直4をAクラスのPHEVに積んだ選択は大正解ではなかった。クルージング中はそれなりに静かで経済的だが、アグレッシブに回すとノイジーで粗さが目立つ。
少なくとも、経済的なクルマであるのはたしかだ。電力走行の航続距離は公称71kmだが、実際には使い方次第で48~56kmほどになるだろう。
日々の移動距離がその範囲に収まるなら、レンジエクステンダー的な使い方で20km/L近い燃費を出せるはずだ。数あるPHEVのなかでも、悪い数字ではない。
ドライバビリティにおける最大の欠点は、ブレーキが残念なほど予測不可能なことだ。制動エネルギーのマネージメントシステムは、ナビゲーションシステムと前方センサーの情報に基づいて、スロットルを引きずっている際のエネルギー回生セッティングを自動的に調整する。
これは、適切なペースでスローダウンしたり、接近するラウンドアバウトやジャンクションに備えたりすると同時に、ひどい渋滞のなかでエネルギー回収することを狙った制御ではある。にもかかわらず、スロットルを抜いてブレーキペダルへと足を移すたびにやや不安を感じる。
というのも、エンジンブレーキの遅れと、その後のペダルの食いつき感がどの程度なのか正確に把握することができないから。それが、あるべきスムースなドライビングを難しくしている原因だ。