【下剋上カー】トヨタ・ヤリス、比較試乗 ガソリン/ハイブリッド 価格/内装/安全装備の評価は?

公開 : 2020.08.12 06:20  更新 : 2021.12.28 00:01

高齢ドライバーにもオススメな訳

イージーリターン仕様は運転席へ設定され、手動型ながらスライド位置のメモリー機能を備えるのが特徴。ターンチルト仕様はシート全体を車外方向に回転させると共に前傾させ、運転席と助手席に設定されている。

とくに高齢ドライバーはイージーリターン機能に注目したい。

イージーリターン機能は、Z系に標準装備、G系にメーカーOPで設定。シート横のメモリーレバーでいつものポジションに復帰させる。写真はヤリスZの前席。
イージーリターン機能は、Z系に標準装備、G系にメーカーOPで設定。シート横のメモリーレバーでいつものポジションに復帰させる。写真はヤリスZの前席。    池之平昌信

以前、後期高齢者と同じように脚捌きを制限する拘束具を装備して運転したことがある。

アップライトかつ適切なドラポジ設定では運転の支障は皆無だったものの、乗降時の脚捌きが厳しく、乗降と按配をつけたドラポジにするとペダル操作が怪しくなる。

つまりワンタッチでシート退避とドラポジへの復帰は利便性だけでなく、安全面でも有用なわけだ。個人的には運転席イージーリターン/助手席ターンチルトの組み合わせが好ましく思われたが、残念ながらその組み合わせは設定されない。

これらのことからプレ&ポストファミリーを意識しているのが容易に理解できる。

プレファミリーには、クルマのある生活の楽しさと可能性をもたらすエントリーカーに。ポストファミリーには、2人の日常とレジャーに最適化を図るダウンサイジングに向けたモデルなのだ。

乗り心地は?

乗り味は、ちょっと硬めのスポーティ&カジュアル。

リアサス形式の違いもあって4WD車のほうが段差などの付き上げが目立ち、パワートレイン別に重くなるほど浮つくような揺れが減少するなどの違いが見られたが、フットワークに関してはざっくり9割方は共通。

トヨタ・ヤリスZ(シアンメタリック+ブラック/1.5Lガソリン)
トヨタヤリスZ(シアンメタリック+ブラック/1.5Lガソリン)    池之平昌信

ハイブリッドの4WD車が最も良質とはいえ、乗り味向上のために支払うには価格差が大きすぎる。

操縦特性は軽快感よりも安定を重視している。

低中速域では軽量小型車ならではの軽快感、気軽と表現したくなるような操縦感覚を示すが、高速あるいはコーナリングで横Gが高まるほどに反応が抑えられていく。

切れ味を求めるなら鈍く感じられるかもしれないが、入ったコーナーが予想よりきつい半径で追い舵を入れたり、ブレーキを踏むにも安心の操縦特性である。

シャシー性能はグレードによる差が少ないが、パワートレインは適応用途に影響が大きい。

1L、1.5L、1.5Lハイブリッド

3タイプのエンジンが設定されるが、1.5Lとハイブリッドはヤリスが皮切りとなる新型。

1Lだけは従来の改良型を採用する。パワースペックを見ても1L車はタウンユース向けの印象だが、試乗した印象も同様である。

トヨタ・ヤリスG(アイスピンクメタリック+ブラック/1.0Lガソリン)
トヨタ・ヤリスG(アイスピンクメタリック+ブラック/1.0Lガソリン)    編集部

エンジン回転を抑えたり、車速変化と一致感を維持しながら変速線勾配を緩くするなどCVTの制御は今風だ。しかし、走行速度が高くなれば小排気量のトルクの細さは誤魔化しが利かず、回して加速力を稼ぐしかない。

タウンカーとして経済性に優れるが、乗り心地も含めて廉価仕様の感は否めない。

1.5L車とハイブリッドに採用されるM15A型は、大量クールドEGRや強タンブル流などにより熱効率を向上させたダイナミックフォースエンジン(DFE)第4弾として開発。

RAV4にも搭載されている4気筒のM20A型から1気筒減らして3気筒化したもので、ヘッド周りの構造やボア×ストロークは共通。

ただし、高回転の使用頻度が高くなりやすい小排気量車の特性に合わせて高回転側へトルクバンドを拡大し、高速域での燃費と動力性能の向上が図られている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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