【下剋上カー】トヨタ・ヤリス、比較試乗 ガソリン/ハイブリッド 価格/内装/安全装備の評価は?

公開 : 2020.08.12 06:20  更新 : 2021.12.28 00:01

燃費に驚く 30km/L超え

ハイブリッド車用ユニットは専用設計となり、エンジン稼働時の回転数は高めに制御されるが、回転数と速度上昇の一致感も配慮され、高速まで安定したドライブフィールを示す。

ただし、発電時の効率を重視した制御もあって、従来のTHS II系と制御特性に大きな違いは感じられない。

トヨタ・ヤリス・ハイブリッドZ(ホワイトパールクリスタルシャイン/1.5Lハイブリッド)
トヨタヤリス・ハイブリッドZ(ホワイトパールクリスタルシャイン/1.5Lハイブリッド)    池之平昌信

しかし、燃費は驚異的だ。

WLTC総合モードで36.0km/L(ハイブリッドX)達成。車載燃費計の簡易計測ながら、穏やかな運転なら実用走行でも30km/Lを超えてくるほど。

省燃費のスウィートスポットも広く、リアルワールドの「燃費王」とでも呼びたくなるほどだ。

一方、1.5L車はDFEの底力を実感する。

アクセルの踏み込みとエンジン回転数を抑えるのは省燃費時代のパワートレインのセオリーだが、ヤリスは見本のような走りを示す。

1.5Lガソリン “自然な走り”

浅いアクセル開度でも踏み増した瞬間にトルクを立ち上げ、ごく初期の反応のよさと踏み込み量に適切な加速度が、過剰なアクセルの踏み込みを抑制する。

また、踏み込み直後のダウンシフト制御も巧み。巡航ギア維持力は上級クラスのDFE車ほどではないが、ダウンシフトする時は早いタイミングで少し回転を上げる。

トヨタ・ヤリスZの内装(シアンメタリック+ブラック/1.5Lガソリン)
トヨタ・ヤリスZの内装(シアンメタリック+ブラック/1.5Lガソリン)    池之平昌信

緩加速での使用回転レンジは2000rpm以上。巡航回転数から300~500rpmくらい上昇するが、この領域のカバーレンジが広く、滑らか運転なら大体を3000rpm以下で済ませる。

全開加速でも5000rpm以上を長々と使うことはなく、高速走行もスモール2BOX車としては常用回転域が低い。しかも、無理に回転を抑えているような感も皆無。

車格を超えた余力感と自然体で燃費に優しい運転ができるドライバビリティを備えていた。

「買い」か?

4名乗車の機会が多いユーザーには不向き、というか一部を除けばスモール2BOXカーというカテゴリーそのものが4名乗車での実用性に消極的。

ヤリスも例外ではない。同車の本領は高速長距離走行で発揮され、その用途では1.5L車かハイブリッド車が望ましい。必須とは言わないまでも、1L車では高速もちょっと安心なタウンカーの域を出ない。

トヨタ・ヤリスZのトランク(シアンメタリック+ブラック/1.5Lガソリン)
トヨタ・ヤリスZのトランク(シアンメタリック+ブラック/1.5Lガソリン)    池之平昌信

しかも生活密着型タウンカーは肌身感覚の使い勝手や嗜好的な要素も大きく、ヤリスはそこで存在を際立たせられるような決め手を備えていない。乗降性向上型シートには光るものもあるが上級グレード限定であり、コスパで見るタウンカーとしての実力は凡庸でもある。

ヤリスを選ぶならタウンユース以上の用途は必須。具体的にはタウン&ツーリングのどちらも欠かせないユーザーが使ってこそ活きる。

ただし、前記したとおり、動力性能や運転支援装備の面から長距離用途を前提にすると1.5L車以上を狙わないと旨味がない。

1.5L車(CVT)は159.8万円、ハイブリッド車は199.8万円がスターティングプライス。グレードはベーシックのXだが、トップクラスの操安/動力性能/燃費/運転支援を揃えてこの価格である。

最上級のZ(試乗モデル)は、Xより30万円前後高いが内外装のグレードアップに加えてフルLEDヘッドランプやイージーリターンシートなどを標準採用。価格相応の充実した装備設定だ。

スモール2BOX車として性能も装備内容も贅沢で、その分だけ同カテゴリーでは高価でもあるが、長距離ツアラーとして選ぶならコスパは相当高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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