【高性能グランドツアラーを比較】ポルシェ911ターボS VS マクラーレンGT 前編
公開 : 2020.08.23 06:50
英国西部、エクスムーア国立公園の雄大な自然に広がる道。最新のマクラーレンGTとポルシェ911ターボS、どちらが気持ちよく駆け抜けることができるのでしょう。最新の高性能グランドツアラー2台を、比較試乗しました。
価格で近似する2台のクーペ
第7世代へと生まれ変わった、992型のポルシェ911ターボ。今回ドライブするのは、その中でも頂点を飾る「S」だ。
ミサイルのように高速で、長距離ツーリングも楽にこなす、スーパー・スポーツカー。それだけにかなり鋭く、硬い。911ターボの登場から45年。初代は3.0Lのフラット6を搭載した930型だったが、代を重ねるほどに桁外れの性能を獲得してきた。
一方で、マクラーレンが新たに送り出したGT。スペック上も見た目もスーパーカーだが、マクラーレンのCEO、マイク・フルーウィットによれば「長距離のために設計された」クルマなのだという。
「マクラーレンだけが可能な手法で、グランドツアラーを洗練させた」と主張する。果たして、ポルシェ911ターボとマクラーレンGT、目指すところは遠からずといえそうだ。
息を呑むほどに速いグランドツアラーを、お考えの読者は多くはないかもしれない。でも、強力なミドシップのマクラーレンと、激しく増強されたリアエンジンの911、比較せずにはいられない。それなら、同じルートを飛ばすしかない。
英国では価格も興味深い。7030ポンド(94万円)程度の差しかない。口座から16万ポンド(2160万円)を引き落とすのに、どちらがベターなモデルなのか。より角が削られ、より甘美な長距離ドライブを楽しめる1台を選んでみたい。
スタートは、マクラーレンのサービス部門本部。ロンドン南西部、オールド・ウォーキングの街にある。1980年代、ポルシェ製のエンジンを搭載したF1マシンが組み立てられていた場所だ。
実用性も重視されたマクラーレンGT
筆者がマクラーレンGTのステアリングを握るのは、今回が初めて。ダックテール風のリアエンドが美しい。ホイールは光沢が眩しい21インチのマルチスポーク。マクラーレンとしては過去最大径で、見た目が優先という印象もなくはない。
高い位置のフロントノーズには、少し違和感がある。伝統的なグランドツアラーとしてのプロポーションを与えつつ、フロントに150Lの荷室空間を確保する機能を持っている。
フロント・スプリッターの位置も高い。ランドローバーとは違うから、アプローチ・アングルがスーパーカーで重視されることはあまりないが、10度もあることは特徴の1つ。マクラーレンGTは日常的な乗りやすさも、重要な要素としている。
実際、このフロントノーズのデザインは走りやすい。5日間をかけて走り込んだが、ミドシップのエキゾチック・スーパーカーとしては珍しく、速度抑制用のスピードバンプに顎を擦ることは1度もなかった。
路面にボディを擦らずに済むとわかっているだけで、市街地での走行はずっとリラックスしたものになる。ノーズリフトの機能を使えば、GTの車高はメルセデス・ベンツEクラス並みになる。サメのように大きく口を開いたスタイルは、好き嫌いが分かれるとしても。
エクスムーア国立公園をナビの目的に設定して、走り始める。相方、マット・ソーンダースがドライブするポルシェ911ターボSとの合流地点だ。