【開放感だけじゃないアピール力】ポルシェ911タルガ4Sへ試乗 最新992型
公開 : 2020.08.20 10:20
タルガらしい硬すぎないサスペンション
ポルシェの場合、自動車メディアへ貸し出すクルマには、10mm車高が低くなるスポーツ・サスペンションを付けることが通例。でも今回のドイツ仕様の911タルガ4Sには、組まれていなかった。新鮮だ。
同じ日に、スポーツ・サスペンションの付いた911の後輪駆動、カレラSにも試乗する機会があった。路面状態の良いドイツの一般道や高速道路では、標準サスペンションとの乗り心地の違いは限定的のようだ。
この環境では、タルガの乗り心地は目的通り。硬すぎず、スポーツカーとしてだけでなく、長距離用のGTとしても充分に使えそうだ。ポルシェ911らしい、素晴らしいドライビング・ポジションと、前後ともに優れた視界も備える。従来のタルガもそうだった。
ルーフを閉じていれば、外界からの隔離感は申し分ない。だが911共通ではあるが、幅が305もある21インチのリアタイヤからは、かなりの量のロードノイズが車内に響く。その騒がしさは、長距離ドライブを遠ざけてしまう理由にもなり得る。
クーペとのサスペンションの設定で違いを実感できるのは、興奮を誘うような、路面の管理状態が悪い郊外の道に出てから。PSAMをソフトな状態に保っている限り、鋭い隆起部分ではカレラと変わらない落ち着きで通過。路面のくぼみも、しなやかに均してくれる。
コーナリング時のボディロールは、カレラより大きい。それでも四輪駆動の強力なトラクションと、素晴らしい重み付けがされた正確なステアリングのおかげで、一般道でのタルガは驚くほどに速い。
姿勢制御と乗り心地との見事なバランス
シリアスなドライビング体験でいえば、後輪駆動のカレラSの方が良いだろう。タルガよりタイトで、より純粋なスポーツだ。クルマが生む興奮度も自由度も大きい。積極的にコーナーを攻めれば、リアタイヤがドライバーの背後で穏やかに流れる感覚も楽しめる。
だが、重く柔らかいタルガ4Sでも、姿勢制御と乗り心地とのバランスは見事。ルーフを格納できるという魅力もある。道を取り巻く環境、サウンドや燃えるガソリンの匂いを、全身で感じ取れる。
ただし、ルーフを開いても、期待ほど911のエンジンサウンドに直接さらされるわけではない。フルスロットル時以外では、キャビン全体を耳障りな風切り音が包んでしまう。ドライバーの肩越しに、バッファ音も立ててしまう。
過剰とさえいえるほど高性能化した、992型の911。空気が生む音響的な体験が、せっかくのタルガの満足度を低めている。
一方でほかの911と変わらず、3.0Lのフラット6ユニットは素晴らしい。エンジン自体のサウンドがターボで霞められているものの、アクセルレスポンスは期待通りに即時的。加速感は、個性を感じるほどにリニアで、永遠に続くのではと感じるほど。
PDKも最上級の仕上がり。トランスミッション任せで、素早く、意図通りに変速してくれる。ステアリングホイールに取り付けられたシフトパドルへの反応も、申し分ない。