【先取りの高性能ワゴンと高級SUV】レンジローバーとトライアンフ2.5 PI 前編
公開 : 2020.08.29 07:20 更新 : 2020.12.08 08:35
新しいライフスタイルを提示したSUV
レンジローバーの成功は、多くの人が知るところだろう。V8エンジンにフルタイム四輪駆動を採用し、当初3ドア・ワゴンで登場した。
すべての地形に対応できるSUVを、楽しむために乗りたいと考える人に焦点が向けられた。紳士的な農業従事者は、原野だけでなく都会でも乗れるクルマを探していた。
舗装路での走りにも優れたSUVは、見事に当たった。レンジローバーは、今の流行を先読みしたかのように誕生したといえる。
トランスミッションはハイレシオとローレシオを備え、ロックデフも搭載。低圧縮比のアルミニウム製V8エンジンが生む低回転域からのトルクが、スムーズな走りを引き出した。
コマンドポジションと呼ばれる直立気味の運転姿勢と、上質で冒険心をくすぐるインテリアの雰囲気を、多くのドライバーが愛した。端正な佇まいながら、ボートが載ったトレーラーを牽引できる、機能性も約束した。
1970年代に、どれほどの人が現在のようなSUVとの付き合い方を望んでいたのかはわからない。でも、レンジローバーは新しいライフスタイルを提示した。
機能面に支えられ、レンジローバーは、ステータス・シンボルとしての地位も確立した。世界中の人々を刺激し、様々なブランドへ影響を与えた。最近は、すっかり道路の風景を変えてしまうほどに。
サルーンをもとにカーボディーズ社が製造
トライアンフ2000エステートは、カーボディーズ社が製造していた。ルーフレスのサルーンボディをもとに、燃料タンクとスペアタイヤは荷室の邪魔にならない場所へ移動された。
ワゴンの原型が3ボックスのセダンだという名残は、サイドウインドウの付け根のライン。後端の手前で、わずかにウエストラインが下がっている。
1500ポンドの価格が付いた、高級なエステートは珍しい存在だった。当時といえば、のんびり走る、実用主義のクルマがほとんど。5年後に登場するレンジローバーと同じくらい、実は市場に与えた影響は大きかったのかもしれない。
トライアンフ2000のサスペンションは、フロントがセミトレーリングアーム式。前身といえるスタンダード・ヴァンガードよりはるかに軽量で、優れた設計のボディが与えられている。
6気筒エンジンは160km/hの最高速度を叶え、フォードやヴォグゾールのライバルモデルより扱いやすい。若々しく力強い存在感は、その後しばらく高品質な2.0Lサルーン・クラスを主導した。
1968年にルーカス製のフューエル・インジェクションを採用した2.5 PI MkIへとマイナーチェンジすると、その流れはより強くなった。2.5Lエンジンは133psを発生。英国初の、量産インジェクション・サルーンだった。
1969年にはMkIIとして、トライアンフ2000、2500、2.5シリーズが登場。MkIのPIは短命で、371台の製造に留まっている。