【第3のアストンらしさ】アストン マーティンDBXへ試乗 メルセデスAMG製V8搭載 後編
公開 : 2020.08.21 15:20
高速道路向きの落ち着いた乗り心地
ステアリングはスムーズで、動きは正確。ロックトゥロックは2.6回転となり、反応は良好で重み付けも丁度いい。乗り心地も良く制御されている。ただし、扁平率の低いタイヤのおかげで、ロードノイズが大きい。
アルミニウム製のボディに、大きな車内空間を備えるから、ノイズの面では不利になりがち。管理の悪い舗装でもDBXはしなやかに通過するが、市街地でも静かさが保たれるわけではない。
路面の状態が良くなると、ロードノイズは消える。ほかの部分が上質なだけに、少々残念だと思う。
燃料タンクの容量は85L。とても落ち着いた走りを楽しめるから、高速道路を長距離走るようなスタイルによく合う。
メルセデスAMG譲りとなる、V8エンジンのにぎやかなサウンドは、アストン マーティンとして高級感あるものへ調律を受けている。同時に、個性やスムーズさもやや失われているようだ。
とっさの追い越しに不足ない、たくましいトルクをすぐに引き出せる。0-100km/h加速は4.3秒しか掛からない。
トランスミッションもほとんどの場面で好感触。ただし、そのほかのアストン マーティンが搭載する8速AT並みの、素早い反応が得られない場面もある様子。
姿勢制御には優れ、ボディロールはヴァンテージより少ないほど。同時に、隆起部分やくぼみの通過時は優しく、自然で緩やかな乗り心地が与えられている。
アストンへ加わった第3のラインナップ
アストン マーティン初のSUVは、ドライバーズカーといえるのか。世界最高水準にある4ドアクーペ、アストン マーティン・ラピードとは違うことは間違いない。ほかの競合SUVと比べて考えてみよう。
ランボルギーニ・ウルス。ダイナミクス性能は高いが、落ち着きはない。ポルシェ・カイエン。破壊的なパフォーマンスだが、硬い。ベントレー・ベンテイガ。より高級でも、少し緩い。
それでは、レンジローバーは。運転する喜びに不足はないものの、SUVではなくオフローダーといった雰囲気だと思う。
多くの路面でアストン マーティンDBXは、最も運転が楽しいSUVだといえるだろう。少し背が高い、後輪駆動のスポーティなラグジュアリー・サルーンという、疑似体験が得られる。しかも車高が高いぶん、視認性は良い。
完璧ではない。だが、条件によっては、最高のモデルになり得る。
アストン マーティンらしいか。率直にいって、筆者は従来のアストンらしさは薄いと感じた。フロントエンジンのボンネットが長いクーペと、ミドシップのボンネットが短いスーパーカーに加わった、新しい第3のアストン マーティンといった印象だ。
SUVという多様性が求められる時代に、アストン マーティンが必要とするモデルとしては相応しい。経営者が交代した今、アンディ・パーマー時代の寛大さを、改めて感じられる1台だといえるだろう。
アストン マーティンDBX(欧州仕様)のスペック
価格:15万8000ポンド(2133万円)
全長:5039mm
全幅:1998mm
全高:1680mm
最高速度:291km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:6.8km/L
CO2排出量:323g/km
乾燥重量:2320kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:549ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/2200-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック