【EV人気の裏側】コバルト人権問題 労働者保護をリード、ボルボの「ブロックチェーン」とは
公開 : 2020.08.31 19:50
EVのバッテリーにはコバルトという金属が使われますが、この鉱物をめぐり、産出国では児童労働など人権問題が悪化。自動車会社にとって重い課題ですが、ボルボはブロックチェーン技術を用いて解決に取り組んでいます。
コバルトの需要増加が人権問題に
環境規制と消費者の需要の変化により、排出ガスを削減するため、バッテリーEV(BEV)の需要は今後数年で急速に増加すると予想されている。
しかし、EVに搭載されるリチウムイオンバッテリーには大量のコバルト(Co)が使用されているため、内燃機関から電力への移行には大きな課題が伴う。
コバルトは、自動車やスマートフォンに使用される充電式バッテリーの主要な構成要素である。現在、世界の供給量の約60%は、コンゴ民主共和国の鉱山で採掘された鉱石から製錬されている。
需要が急増して鉱物の価格が高騰しているにもかかわらず、コンゴの推定25万5千人の鉱山労働者は、1日1.50ポンド(207円)以下の賃金で劣悪な環境で働いている。
報告書によると、こうした労働者のうち3万5000人以上が14歳未満で、1日あたり約60ペンス(82円)を稼いでいるという。また、同国内では違法採掘、人権侵害、汚職なども懸念されている。
昨年末、コンゴの14家族は、アップル、アルファベット(グーグルの親会社)、マイクロソフトなどの企業に対し、米国で訴訟を起こした。
彼らは、子供たちがコバルト鉱山で働かされて死亡または重傷を負ったと主張。名前の挙がった企業は、製品用に供給されるコバルトが児童労働に関連する可能性があることを知っていながら、サプライチェーンを適切に規制しなかったとしている。
アップル、アルファベット、マイクロソフトはそれぞれ声明を発表し、責任を持って素材を調達することを約束したと述べた。
この問題の解決に取り組む自動車メーカーも存在する。その中の1社が、ボルボである。
ブロックチェーンが鍵となる
自動車会社にとっても、コバルトやサードパーティのサプライヤーから入手した原材料が、倫理的に調達されているかどうかは大きな課題だ。
ボルボは昨年、ブロックチェーン技術を導入して、将来のボルボ車とポールスター車のバッテリーに使用されるコバルトを追跡できるようにすると発表した。
同社はバッテリーサプライヤーのLG化学やCATLと協力してこの技術の導入に取り組んでおり、最近ではブロックチェーン企業のサーキュラー社に投資して技術導入を支援している。
ボルボの調達責任者であるマルティナ・ブッフハウザーは、フィナンシャル・タイムズ紙のオンラインサミットで、次のように語っている。
「私たちはすでにコンゴ民主共和国の非営利団体と協力して、そこで働く労働者の保護を支援しています。ボルボのクルマに使われるコバルトがどこから来ているのか追跡することは、長い間、我々の課題でした。しかし、今まではそのための技術が不足していました」
ブロックチェーンは事実上、一連の記録からなるデジタル台帳であり、それぞれが相互にリンクし、暗号技術によって保護されている。データの送信ごとに改ざんできない記録を作成し、独立した検証と監査を可能にする。
コバルトの場合、ボルボのブロックチェーン台帳は、素材の産地、重量、サイズ、所有権の連鎖、関係者全員が基準やガイドラインを満たしているかどうかなど一連の情報を記録する。
「これを利用して、ティア1のサプライヤーとのサプライチェーンの全行程を遡ることができます。これは、バッテリー生産のすべてのステップを、コバルトを含む鉱石が産出された個々の鉱山に至るまでマッピングできることを意味します」