【スバルSTI、なぜ今アメリカ重視?】S209は北米専用 商品価値観の違いが背景 日本への影響は?

公開 : 2020.08.19 05:50

なぜ、STIはこのタイミングでアメリカ市場にこだわるのでしょうか? アメリカでは、STIのブランド力がまだ弱いからです。アメリカとSTIの関係を振り返るとともに、STIブランド確立までを考えます。

北米専用「S209」を直接感じながら

text:Kenji Momota(桃田健史)

なぜ、日本では発売しないのか?

STIファンが注目する、最新コンプリートカー「S209」は北米専用モデルである。

STI最新コンプリートカー「S209」
STI最新コンプリートカー「S209」    桃田健史

東京都三鷹市のSTI(スバルテクニカインターナショナル)本社に隣接する、STIギャラリーでは今年(2020年)7月から、S209開発の舞台裏に関する企画展示がおこなわれている。

筆者が取材で現地を訪れた際、STIの平岡泰雄社長からS209の特長を詳しく聞いた。

その中で、平岡社長が強調したのが、フレキシブルドロースティフナーだ。

車体の前後に装着されているが、リアシートの後方位置にある状態を指さしながら「これがあるのとないのでは、明らかにクルマの挙動が変わる」と平岡社長は自信満々の表情をみせた。

フレキシブルドロースティフナー単体での展示もあった。これはSTIの走りのチューニングの統括者であり、ニュルブルクリンク24時間レース参加チームの総監督でもある辰巳英治が自ら溶接をして作り上げた試作品だ。

その他、S209にはSTIがこれまで築き上げてきたスバル車に対するノウハウが詰め込まれている。

となれば、日本のユーザーもS209が欲しくなるかもしれない。

だが、エンジンは米国使用WRX STI専用のEJ25をベースとするなど、あくまでもアメリカ向けとして開発された。

なぜ、STIはこのタイミングでアメリカ市場にこだわるのか?

ブランドイメージを築くため

アメリカでは、STIのブランド力がまだ弱いから。

それが、STIがアメリカ市場強化に動く理由である。

STIの平岡泰雄社長。
STIの平岡泰雄社長。    桃田健史

平岡社長の言葉を借りるならば「STIは(モデル)グレードとしての認知に留まっている」のだ。

日本でも、モデルのグレードとして、STIスポーツは人気が高い。なかでもレヴォーグは新車販売の約3割にまで及ぶ。

そうなっているのは、STIというブランド自体の認知度が高いからこそ、またSシリーズというコンプリートカーの存在感が大きいからこそ、実現できているのだ。

一方のアメリカでは、いわゆるエンスージァスト(熱狂的ファン)のみがSTIを理解している状況だ。

日本のスバルファンのように、STIがどのようなバックグランドがあるのかを、ネットの情報等を通じて知っている。

だが、一般のクルマユーザー、またはスバルのユーザーにとって、STIをよく知らない人が多く、仮に知っていても、前述にようにグレード名称という認識しかないのが現実だ。

原因は、STIが現在進めているブランド戦略が、日本国内スーパーGTや、アメリカ人にとって馴染みの薄い独ニュルブルクリンク24時レースに起因しているためかもしれない。

もちろん、北米でもこれまで、STIの名前を掲げたモータースポーツ活動はおこなってきたが、三鷹のSTI本社の直接的なオペレーションでない場合が多い。

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