【コンパクトなのに上質】プジョー208 GTライン 新型を日本試乗 100ps仕様の評価は?

公開 : 2020.08.21 19:02  更新 : 2021.10.09 23:31

無駄なガマンを強いてこない

アイシンAW製8速ATはすでにプジョーでは馴染みの組み合わせだが、今日びのトルコンATらしくロックアップは当然がっちり目。加減速を繰り返す街中では頭を前後に揺すられることもあるので、走行モードはコースティング重視のエコモードにしておく方が快適だ。

すると先ほど述べたような首都高の合流の途中で、ノーマルモードに戻し忘れたままだとまともに加速せず臍を噛む、それが凡百のクルマの常なのだが、逆に208はそんな時、ドライバーの操作を間髪入れずにオーバーライドさせる。

プジョー208 GTライン(日本仕様)の後席内装
プジョー208 GTライン(日本仕様)の後席内装    森山俊一

ようはエコモードから戻し忘れていても即、加速態勢に移る。

単純なことだが、乗り手の意志を反映させるという点において、阿吽の呼吸がよく分かっているし、それが1.2Lターボという小排気量でストレスなくできることに、驚かされるのだ。

CMPプラットフォームは先行して発売されているDS 3クロスバックと共通。

Bセグの5ドア・ハッチバックとは思えないボディの剛性感、そして高い自在感が味わえるハンドリングの感覚は地続きながら、1465mmと車高が低い分、切り始めの応答性は208がやや優る。

逆にロードノイズをはじめとする静粛性では、二重ラミネートガラス使いで遮音材も多用しているであろう前者に分がある。そこは欠点というよりクルマのキャラクターであり、棲み分けでもある。

走って分かる内装の造り込み

それにしても速度域を上げるにつれ、208 GTラインはBセグ離れした上質なライド感を醸し出す。

カーボンの目地が型押しされたソフトパッドのダッシュボードに蛍光グリーンのステッチが施され、ところどころをピアノブラックが締める。

プジョー208 GTライン(日本仕様)の前席内装
プジョー208 GTライン(日本仕様)の前席内装    森山俊一

逆説的だがそんなインテリアの質のよさを感じるのは、視線の動きがある程度限られる、高速道路を走っている最中のことだ。

まじまじと眺められる訳ではないからこそ、視界の端に入ってくる静的質感の高さが、感覚受容の下支えになるのだろう。

見た目だけでなく、ステアリングとシートやペダル位置、操作ボタンの配置といったエルゴノミーまで含めた快適さだ。

ADASをONにすると距離の制御やレーンキープにややぎこちなさはあるが、そんなもの使うのか?と鼻で嗤うようなところが、208のキャラクターにはある。

それほどドライビングの楽しみに没頭させる1台だ。

208で走ること 意外なほど穏やかな経験

よくプジョーの操作系は扱いが難しいという声もあるが、一度そのロジックを見つければ案ずるより産むが易しの使い勝手ではある。

タッチスクリーンであれこれ探すより、その下に並ぶトグルスイッチが基本、ショートカットなので、エアコンの温度調整はもちろん、各機能の呼び出しに難はない。

プジョー208 GTライン(日本仕様)
プジョー208 GTライン(日本仕様)    森山俊一

こうしてある程度の距離を走り終えても、コンパクトな車格からは想像もできないほど、疲れが少ないのは昔からプジョーの美点だ。

実際、走行距離に比して疲労度の少なさを誇るような感覚は、昔からメルセデスとプジョーの専売特許で、Bセグでこの「疲れなさ具合」には脱帽せざるを得ない。

205の時代より相当に大人びても独特のハンドリングの妙味と快適性は進化し続けているし、208 GTラインはいつもにも増して旧びない、プジョーの2シリーズの哲学を感じさせる仕上がりだった。

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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