【なぜ牛乳がぶ飲み?】インディ500 優勝するとミルク飲む慣習 2つの理由が存在

公開 : 2020.08.25 05:50

F1やMOTO GPで優勝したら表彰式で豪快なシャンパンファイトが恒例行事になっています。ところ代わって、アメリカのインディアナポリス500マイルレース(インディ500)では勝者はミルクを飲みます。背景にいったい何が?

歴代優勝者たまたま飲んだのがきっかけ

text:Kenji Momota(桃田健史)

インディ500で2度目、勝利のミルクを飲んだ佐藤琢磨選手。

アメリカ人にとっては、至極当然の光景だが、日本人にとっては「なぜミルク?」と思ってしまう。

2020インディカー・シリーズ第7戦 第104回インディアナポリス500マイルレースで、2017年大会に続く2度目の優勝を果たした佐藤琢磨。
2020インディカー・シリーズ第7戦 第104回インディアナポリス500マイルレースで、2017年大会に続く2度目の優勝を果たした佐藤琢磨。    インディアナポリス500

背景には大きく2つの理由がある。

1つは、偶然の出来事を継承した伝統作りだ。

アメリカが独立を宣言したのは1776年。いま(2020年)から244年前であり、欧州の主要国、中国、そして日本と比べて明らかに歴史が浅い。

そうした中で、アメリカが基盤となって世界的な産業に育ったのが自動車である。自動車の発祥はドイツだが、フォードによる大量生産体制の影響は極めて大きかった。

そうした中、自動車を活用した競技も始まり、ブリックヤードと呼ばれるインディアナポリス・インターナショナル・スピードウエイ(IMS)が生まれた。

そこで開催されるインディアナポリス500マイルレース(通称インディ500)は、1911年が起源とされる。

IMSが発行する資料によると、1928年、1933年、そして1938年に優勝した、ルイス・メイヤーがレース終了後にミルクを飲んだことが、後の勝者にも影響を与えたという。

メイヤーにとってミルクは、栄養ドリングのような存在だったようだ。

歴史が浅いアメリカで、主要産業として一気に拡大していった自動車。その象徴となったインディ500にとって、ミルクは貴重なヘリテージ(歴史)になった。

アメリカンマーケティングも理由

もう1つが、企業のマーケティングだ。

筆者がインディカーレースと直接関わるようになった1980年代。すでにインディ500では優勝者に様々な章典が用意されていた。

第7戦プラクティスのもよう。
第7戦プラクティスのもよう。    インディアナポリス500

いまでは当たり前になったが、ヴィクトリーサークルでスポンサーのキャップをかぶり直してカメラマンにポーズをとるのが、アメリカンマーケティングのスタイルとして定着していた。

ミルクについても、農業関連団体の協賛に関係している。この件についてこれまで何度か、IMS関係者に聞いたことがあるが、もともとが関連団体から持ち込まれた話なのか、それともIMS側で発案して定常的に実施するようになったのか、正確な経緯は分からないという。

また、元F1チャンピオンのエマーソン・フィッティパルディが1993年のインディ500勝利時、ミルクではなくオレンジジュースを飲んだ。これは、彼が当時、母国ブラジルでオレンジ栽培事業を経営していたから、というのば定説だ。

90年代に、本件について筆者はエマーソンに直接話を聞いたことがあるが「そう言われると、そうかも。あまりよく覚えていないよ」と、茶目っ気たっぷりにウインクしたことを思い出す。

このように、インディ500とミルクの関係は、なんとなくボンヤリしている印象がある。

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