【数奇なフランス・グランプリ】デューセンバーグに破れたバッロ 3/8 LC 前編
公開 : 2020.09.06 08:50 更新 : 2020.12.08 08:34
驚くほどにニュートラルな挙動
エンジンの搭載位置は低く、クルマの中心へ寄せられている。トランスミッションはリモート操作で、重量のあるスペアタイヤがリアに乗り、900kgあるバッロの挙動は驚くほどにニュートラルだ。
シャシー剛性は高く、速度を上げて路面の隆起部分を超えても、不安定になることはほとんどない。リアのフリクション・ダンパーも有効に働いている。
燃料満タン状態で、160km/hの速度でミュルザンヌを疾走した1921年。土埃を浴びせたライバルチームのデューセンバーグを追い抜くには、さらに高いレベルのマシンが必要だったようだ。
ブレーキはロックを防ぐため、漸進的な制動力の高まりと、感触が必要。ありがたいごとに、今回試乗した1006のバッロ 3/8では、ロックの兆候はなかった。
だが数時間もの運転で疲れていれば、細いドラムブレーキの扱いは難易度が上がり、予測も難しくなる。優れた油圧システムを装備した、デューセンバーグを追うのは簡単ではなかっただろう。
だが最大の問題点は、4速目に付いたロック機構。ダブルクラッチでシフトダウンしながら、レバーのフックを外す作業が、本当に難しい。ラルフ・デ・パルマが求めた改造がもとに戻され、彼が落胆したと聞いても、不思議ではないほど厄介だ。
この伝説的なバッロを、英国サセックス州の埃っぽい道で運転するという貴重な体験。1920年初頭の熾烈な戦いを、想像せずにはいられない。
この続きは後編にて。