【テストドライバーと一般道を走る】磨かれるジャガーFタイプとFペイス 前編
公開 : 2020.09.05 11:50
ジャガー・ランドローバー社のすべてのモデルは、マイク・クロス率いるチームによって洗練度が高められます。英国編集部の編集長が、ジャガーFタイプとFペイスに乗り、その磨き込まれる過程を確かめました。
30年の経験を持つテストドライバー
クルマのダイナミクス性能を1日で評価する、最も良い手段とはなんだろう。ひいき目はなしに。
もちろん、運転だ。よく理解している手応えのあるコースを、集中して運転する。クルマによってその違いは明らかになる。
事前にしっかりと行程を決め、クルマの準備を整える。ドライバーの準備も必要。感じたすべてを記録し、小さな感覚を拾い上げる。ゴールまでに、不確実な要素は排除する。
JLR(ジャガー・ランドローバー)のチーフエンジニア、マイク・クロスはこんなテストドライブを30年間行ってきた。彼の率いる熟練した「車両完成チーム」の存在が、ジャガーから、優れたドライビング体験を得られる大きな理由の1つになっている。
クロスのチームは以前、ジャガーが目指すべき本当の姿とは何なのか、基準を定めた。それを確実なものにするため、仕事に取り組んでいる。新しいジャガーは、彼が決めた性格付けがなされている。
改良のタスクには、2段階がある。開発初期に行われるものと、後期に行われるもの。
アイデア誕生から数ヶ月後、コンセプト段階から、車両完成チームはクルマの理想像を決定づけていく。顧客を喜ばせるクルマとは何か、細部にまで。「ランドローバー・ディフェンダーの場合、見た目通りの走りが必要でした」。クロスが振り返る。
プロジェクト開始から1年半ほどが経った頃、走行可能なプロトタイプが完成。チームは路上で一連の評価テストを開始する。エンジニアとデザイナーが、目標にどれだけ近づけられたのか、確認していく。
英国で良く走るクルマは、どの街でも良く走る
近年では、実体のないクルマをコンピューターでシミュレーションできる。プロトタイプは、完成形の90%くらいまでは仕上がっているべきだという。
つまりプロトタイプでは、微妙な調整作業を開始できる状態になっている。以前と比べて、必要な作業量は大幅に少なくなった。
ジャガーのプロトタイプは、世界中の環境で試験される。量産車として上層部の承認を受けるまでに、延べ80万kmの距離を試走するという。
最高気温が50度に達する砂漠から、氷点下30度の北極圏まで、ジャガーお決まりの試験場所がある。そこで、完全に機能するかが試される。
高速巡航走行は、ドイツのアウトバーンで。速度無制限区間だ。動的性能は、ニュルブルクリンクやナルドで評価される。また英国ゲイドンにあるJLRのテストコースでは、最高速度320km/hを超えるクルマもある。
といっても、これらは極端に厳しい条件下での話。多くのオーナーが、日常的なジャガーの運転で体験するような走りは評価できない。英国の道を快適に走れるクルマがほしいなら、英国の道で調整を受けることが重要。
英国の道路環境は、特に独特で厳しい。補修も完全とはいえない。英国で良く走るクルマは、どこの街でも良く走る。フランスやドイツのエンジニアも、それは知っている。