【テストドライバーと一般道を走る】磨かれるジャガーFタイプとFペイス 前編

公開 : 2020.09.05 11:50

ジャガーのテストドライバーと480km

筆者は今回、ゲイドンにあるJLR(ジャガー・ランドローバー)の本社にやって来た。彼らの試乗評価を、間近で体験するために。英国自動車博物館のすぐ隣りにある。クロスのチームが、プロトタイプの試乗を繰り返すコースにも近い。

行程は480km(300マイル)ほど。1日で充分走破できる。ゲイドンのJLR本社を出発点に、ウェールズ中部を走り、ゲイドンへ戻る。「マイク・クロス300マイル」と、今回は呼ぶことにした。

ジャガーFタイプ(英国仕様)
ジャガーFタイプ(英国仕様)

「われわれがこのテストを好むのは、実際のオーナーが運転するであろう環境で、クルマを走らせられるからです」。クロスが説明する。

「目的を持って運転でき、無駄も少ない。この480kmで、いつかジャガーのオーナーが遭遇するであろう、すべての条件に出会えます」

今日はクロスと一緒に、多くの区間を筆者自身が運転した。この区間には、あらゆる性能が試せるだけでなく、運転を楽しめる道も含まれていた。英国の素晴らしい景色も、同時に楽しむことができる。

コースをしっかり走るには、それなりの運転技術と、集中力がドライバーへ要求される。

英国のロックダウンが解除されて、初めての長距離ドライブ。自宅にこもることで、クルマを運転するという単純な喜びにも気付かさせてくれた。

「通常は、朝の6時にゲイドンを出発。M40号線を北西に進み、バーミンガム方面を目指します。朝のラッシュ時間に重なりますが、マイナスではありません。多くのことを評価する時間が得られます」

あらゆる瞬間を逃さず評価する

「アイドリングストップはスムーズか。先行車と車間距離を保つことは簡単か。低速域でのブレーキングは直感的か」。クロスは、次々に例を挙げる。

シートの快適性は、ショールームで第一印象は確かめられる。だが、長距離運転時の快適性は、実際にオーナーになければわからない。ブレーキングの踏み心地も、走らなければわからない。

ジャガーのチーフエンジニア、マイク・クロス
ジャガーのチーフエンジニア、マイク・クロス

ブレーキペダルの感触が不確かなら、渋滞時はヒヤヒヤしたものになる。「柔らかい踏み心地のブレーキは求めないはずです。ストロークが長すぎるものも。いかに直感的に効くかが重要。高速域では見事に効き、低速時は漸進的で扱いやすいブレーキが良いですよね」

「雨の日のオートワイパーや、薄暗い時のオートライトも同様。これらを確かめることも、チームの役割の1つです。簡単で意図したとおりに動く必要があります」。横で説明するクロス。

バーミンガムを通過し、M6号線へと入る。アスファルトは摩耗し、ノイズの多いコンクリート区間も混在する。クロスとチームのメンバーが、好きな区間だという。

「大きなロードノイズは、乗員を疲れさせます。路面の違いで、ロードノイズが大きく変化することも好まれません。風切り音もできるだけ抑えたい。耳障りなバッファー音は、特に避けたい部分です」

とはいえ、M6号線ではさほど速度は出せない。ノロノロ走るトラックに引っかかる。クロスたちは、アクセルとブレーキの設定を確かめる機会だと捉えている。あらゆる瞬間を逃さない。

この続きは後編にて。

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