【あたらしくなったベントレーSUV】ベンテイガ試乗記 「迷ったらW12」覆した4L V8の熟成 動的性能
公開 : 2020.08.30 11:50 更新 : 2022.03.24 21:24
最大100mm 足元回りのスペース拡大
インテリアではセンターコンソール上縁部のエアベントがコンチネンタルGTやフライングスパーと同じ長方形型となり、中央のアナログ時計を取り囲むようにトリムが配される。
左右のベントは変わらずブルズアイとよばれる伝統の円形で、そのコントラストがモダンさを際立てている。
その下部に据えられるインフォテインメントモニターは10.9インチの高精細タッチスクリーンを採用。また、ナセル内のメータークラスターもフルデジタル化され、ADASの作動状況やナビデータなどを速度と並列にインタラクティブ表示することが可能となった。
造作面ではステアリングがスリム化されたほか、センターコンソールやドアアームレストのデザインも変更を受けており、収納などの機能性が向上した。
前席はフォームを改められ着座感を改善、後席は標準の3人掛けベンチ仕様ではバックレストのリクライニング角度が向上、ベンチレーター機能も追加された。
オプションの2人掛けセパレート仕様ではバックボードの位置変更によりバックレストを立てた状態で30mm、倒した状態では100mmも足元回りのスペースが拡大している。
更に同じくオプションで3列シート7人乗りの仕様も選択が可能だ。
4L V8ツインターボ 数値スペック
現在、日本で正式発表されているエンジンバリエーションは4L V8ツインターボのみ。最高出力は550ps、最大トルクは78.5kg-mで0-100km/h加速は4.5秒、最高速は290km/hというパフォーマンススペックはそのまま継承されている。
そして去る8月12日、欧州では6L W12ツインターボを搭載するベンテイガ・スピードが発表された。
こちらも最高出力は635ps、最大トルクは91.8kg-mで0-100km/h加速は3.9秒、最高速は306km/hとパフォーマンススペックは前型と同じ。
ちなみに306km/hの最高速はランボルギーニ・ウルスをわずか1km/h上回っており、すなわち世界最速のSUVの座はベンテイガが保持しているということになる。
同門同士の内ゲバといえばそれまでだが、いずれにとってもそれは譲りたくない称号ということなのだろう。
V8、望外の熟成 「W12推し」覆る
そのW12を搭載したベンテイガ・スピードは、程なく日本仕様の価格詳細も決定するはずだ。
そしてもちろん厳密にいえば、12気筒にはそれでしか味わえない気品が乗り味に宿る。これは厳然とした事実だ。
ゆえに僕は、ベントレーで迷ったらW12と常に推し続けてきた。
が、今回初めてその思いが覆ったのは、この新型ミュルザンヌやコンチネンタルGTが搭載するV8ユニットが望外の熟成を重ねていたからだ。
特に低中回転域のマナーにおいては、W12とほぼ遜色のない滑らかさをみせてくれる。ましてや8速トルコンATを採用するベンテイガなら、その変速マナーに雑味は微塵も感じられない。
とはいえ高回転域を多用すれば、さすがにV8のパリパリッとしたビート感が僅かながら耳や掌に伝わってくる。
この域でさえシュワーンと細粒感をもって回ってくれるところにW12の高質さがみてとれるわけだ。
が、そのぶんV8には鼻先の軽さが相まっての軽快な身のこなしという個性が伴っている。改めて先述の数字を思い浮かべてみるに、4分の3に達するシティユースがメインのユーザーにとっては、V8のキビキビ感の方がかえって喜ばれるかもしれない。
ちなみにパフォーマンスという点においてはV8でも存分に過剰だ。全開加速の迫力などはそこらのスポーツカーも押しのけるほどで、動力性能的にはマカン・ターボを蹴散らす。
カイエン・ターボにほど近いわけだから当然といえばそうだろう。
この質量がその速さで、しかもこの乗り心地で……という物理を丸無視したような圧倒的胆力が背徳の魅力として宿ることは、この手のSUVには必然だ。
その魔性に呑まれることなく、ジェントルに躾けるドライバーの紳士性が求められる。
そういう意味でもベンテイガは相変わらずベントレーの一員に相応しい設えと性能を有していると思う。