【V6エンジンのワイドな異端児】ルノー・クリオV6とVWニュービートルRSI 後編
公開 : 2020.09.12 16:50 更新 : 2020.12.08 08:36
チャーミングな容姿を持つ、2台のコンパクトモデル。しかし中身は激しくブースト圧を高めた、サーキット走行が前提のモンスターマシンです。当時も珍しい存在でしたが、近年はさらに希少さと注目度を高めています。
ニュービートルのボディを80mm拡幅
ルノー・クリオ(ルーテシア)V6と同様、フォルクスワーゲン・ニュービートルRSIもモータースポーツが起源。ワンメイク・レース、ビートルカップ用に作られた。V6エンジンと四輪駆動を搭載したニュービートルは、先にも後にも、これ1台だ。
ナローアングルのV6エンジン自体は、2.8Lと2.9Lの排気量として、1990年代を通じて見慣れた存在ではあった。ハルデックス式の四輪駆動を備える、V6 4モーション・ゴルフも存在していた。
2001年に登場したニュービートルRSIは、本質的にゴルフのシステムを流用している。だが、ボディはワイド化され、インテリアもスポーティに味付け。エンジンルームギリギリに収まるVR6ユニットの排気量は、3.2Lに拡大されている。
3.2Lユニットはその後、四輪駆動のゴルフR32や、V6版のアウディTTへと転用される。プラットフォームも共有し、RSIはその試験台だったのかもしれない。
最高出力は、クリオV6より若干劣る225ps。一回り大きいボディに四輪駆動システムを備えるから、車重は160kgも重い。
増強されたパワーを受け止めるため、シャシーもアップグレード。専用のサスペンションで車高を下げ、ブレンボ製のブレーキを備える。18インチのホイールは、OZ社製のスーパーツーリズモだ。
ボディのシルエットは、ビートルカップ用マシンそのまま。フェンダーは80mm広く、前後バンパーは大型化。リアウインドウにスポイラーが付き、巨大なリアウイングへ空気を導く。2本のレムス製エグゾーストが、リアビューを引き締める。
高級感と特別感のあるRSIのインテリア
クリオV6と違って、ニュービートルRSIのインテリアは特別感が漂う。新車時の価格は5万ポンドもした。ニュービートルの、3台分だった。
車内で目を引くのは、カーボンファイバー製シェルでレザーが豪奢なレカロシート。クリオV6のものより、しっかり身体を支えてくれる。サーキット走行にもぴったり。
リアシートは残され、こちらも上質なレザー張り。リアシートに人を載せることも、その後ろの荷室に手荷物を積むこともできる。
ドアパネルはカーボン製で、ヘッドライニングはアルカンターラ張り。削り出しのアルミニウム製部品が、あちこちにあしらわれている。助手席側のドアハンドルやスピーカーのリングなども、プラスティックではなくアルミ製。
光の反射が眩しい。質感は生意気なほどに高い。
メーターパネルはカーボンファイバー製となり、その中央にはシフトライトが配される。ダッシュボード中央には、油温と油圧、電圧の3連メーターが並ぶ。ラジオはルーフ側に移されている。一輪挿しはない。
ニュービートルを運転するが、雰囲気はいつもと変わらない。着座姿勢はアップライト気味で、目前には机のように広大なダッシュボードが広がる。VR6ユニットは、車内からは見えない。
イグニッションキーを挿し、スタートボタンを押す。V6エンジンが滑らかに目を覚ます。洗練されているが、アイドリング状態でも可能性を示すように、存在感がある。
クラッチは重め。シフトレバーは短く、操作感も良い。精巧な機械感がある。