【V6エンジンのワイドな異端児】ルノー・クリオV6とVWニュービートルRSI 後編
公開 : 2020.09.12 16:50 更新 : 2020.12.08 08:36
4本のタイヤがパワーを路面へ伝える
ニュービートルを発進させると、アクセルレスポンスの鋭さに気づく。ゴロゴロと特徴的なエンジンノイズが聞こえてくる。
中回転域の活力が、ボディを力強く引っ張る。強化されたブレンボ製ブレーキに見合うだけ、速い。ステアリングはクリオV6のようにおっとりしているが、正確で重み付けは丁度いい。
滑らかな路面のサーキットでの試乗だが、ニュービートルRSIは明らかに硬い。舗装の継ぎ目でドスンと振動が来る。でも、英国郊外の路面の酷い道でも、我慢はできなくなさそうだ。
スタッドレスタイヤのままだったから、比較は不公平かもしれない。温かいドライコンディションだが、コーナーへアクセルオフの状態で突っ込むと、スキール音を立てる。クリオV6を真冬に運転する方が、もっと不安定だとは思うが。
ニュービートルRSIは、クリオV6ほど激しくなく、ドライバーに優しい。ボディロールは少なく、グリップ力は穏やかで、アンダーステアもマイルドだ。
有り余る力で悲鳴を上げることもなく、4本のタイヤが充分なパワーを路面へ伝える。アクセル操作でのコーナリング変化も、スタビリティ・コントロールをオフにしたときに、少し匂わせる程度。
ちなみにクリオV6には、スタビリティ・コントロールは備わらない。
不思議なことに、ニュービートルRSIは一生懸命運転しようとするほど、遅く感じられる。高回転域では金属質なエンジンノイズが響くが、あまり回りたがりではない。
太いトルクを活かし、中回転域で走らせた方が良い。気張らないぶん、速く感じられる。
ゴルフRとアルピーヌA110へと続く祖先
硬い乗り心地を除いて、ニュービートルRSIであっても、ドライビング体験はフォルクスワーゲンらしい。ボディもインテリアも、仕上がり水準は高く、メカニズムも確かなテストを経ている。
雨の夜なら、クリオV6よりニュービートルRSIの方が疲れるとしても、はるかに安全なはず。それだけに、フォルクスワーゲンの方が今も取引価格は高い。
クリオV6は専用のミドシップ・シャシーにV6エンジンを載せ、安っぽいインテリアと、急ごしらえの技術が組み合わされている。ペースを上げるほど、ドライバーを道の外へ放り出そうとする。ルノーの経営陣も、その特性には悩まされたことだろう。
魅力的なミレニアル世代の誕生から20年。いま筆者が手に入れるなら、選ぶのは個性の強いフランス製ホットハッチの方だ。
ニュービートルRSIのDNAは、今でもゴルフRに宿っている。一方のルノーは、ミドシップ・ホットハッチというアイデアを捨ててしまった。しかしより大胆に、アルピーヌA110という形へ発展している。
フォルクスワーゲン・ゴルフRと、アルピーヌA110を、いま比べることはないだろう。しかしその祖先は、驚くほど似たモデルとして誕生したのだった。