【最近ぜんぜん見ない?】ワゴン車、なぜ絶滅危惧 理由はSUV以外にも ただし魅力は継続 豊かな可能性も

公開 : 2020.09.01 07:40  更新 : 2021.10.22 10:15

SUVの様々な魅力、ワゴンの需要を吸収

日本車が大量に販売される北米市場の変化もあった。北米では1940年代から1970年代に掛けてワゴンが人気を高めたが、この後はミニバンが短期間堅調に売れて、SUVの時代に入っていく。

SUVの基本スタイルは背の高いワゴンだから、4名乗車も快適に行えて荷室も広い。荷室に3列目の補助席を備えたSUVもあり、多人数乗車も可能だ。

マツダCX-30。マツダも多くのSUVをラインナップする日本メーカーになった。
マツダCX-30。マツダも多くのSUVをラインナップする日本メーカーになった。    田村 翔

なおかつSUVの外観はワゴンよりも存在感が強く、4WDなら悪路走破力も高い。

SUVは多岐にわたる魅力を備えることから、人気を高めてワゴンの需要を吸収した。

日本でもSUVの人気が高まり、同様にワゴンの衰退を促している。

人気低下も魅力が薄れたわけではない

以上のようにワゴンは、ミニバンやSUVに押されて人気を下げたが、その魅力まで薄れたわけではない。

ワゴンの全高はセダンと同等だから、ミニバンやSUVに比べると重心が低く、走行安定性を高めやすい。

またワゴンでは乗員が高い位置に座って左右に揺すられることもないから、乗り心地を向上させやすい。

つまりセダンが備える「安心と快適」に、使い勝手の良いリアゲートを備えた荷室を加えたのがワゴンといえるだろう。

スバルはワゴンの人気が下がった今でもレヴォーグに力を入れている。これもワゴンの「安心と快適」が、スバルのクルマ造りに合っているからだ。

スバルはレオーネの時代から4WDのワゴンを用意して、今では40年近い歴史に支えられている。

メルセデス・ベンツBMWアウディフォルクスワーゲンといった欧州車にワゴンが多いのも、同じ理由に基づく。

欧州は日常的に高速で移動する機会が多く、2000年頃までは高重心のSUVをほとんど用意していなかった。

その代わり1970年代の後半に、メルセデス・ベンツEクラス(当時は190シリーズの登場前だからコンパクトメルセデスと呼ばれた)のW123型が北米需要に応えてワゴンを用意すると、少しずつ採用車種を増やしていった。

SUVへの発展 豊かな可能性を秘め続ける

今は前述の通り北米ではSUVが売れ筋で、2000年頃から欧州車も輸出を視野に入れてSUVを用意するようになったが、ワゴンのラインナップも多く残されている。

走行安定性が重視される欧州では、実用的な意味でワゴンのニーズが根強く、荷物の配達などにも使われている。

トヨタ・カローラ・ツーリング
トヨタカローラ・ツーリング    トヨタ

今の国産ワゴンは車種数が減って少数精鋭になったが、今後もレヴォーグ、カローラ・ツーリング、マツダ6などがワゴンの需要を支えていく。

特に最近は衝突被害軽減ブレーキの普及もあって、クルマの安全に対する関心が高まった。

危険回避性能を含めた総合的な安全性になると、重心の低いワゴンとセダンは優れた性能を発揮する。

4名で乗車して、安全かつ快適に長距離を移動できるクルマが欲しいなら、ワゴンはアクティブな雰囲気も備えるから選ぶ価値も高い。

また低重心のワゴンでは、スポーティな運転感覚も味わえるので、レヴォーグにはSTIスポーツも用意されている。

さらにワゴンをベースに最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)を170-200mmに高めると、レガシィアウトバックやアウディA4オールロード・クワトロのような重心を適度に抑えたSUVを開発することも可能だ。

車種数は減ったが、ワゴンは今でも豊かな可能性を秘めたカテゴリーであり続けている。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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