【ローライダー・クイーン】ピンク色のシボレー・インパラ 東LAのアイコン 後編
公開 : 2020.09.13 16:50 更新 : 2020.12.08 08:36
北米で広く知られる、ピンク色のシボレー・インパラ。オーナーの情熱が、くたびれた中古車を、アメリカン・カーカルチャーを代表する1台に生まれ変わらせました。日本で展示された過去もある、ローライダーをご紹介しましょう。
115輪のバラと2000枚を超える葉
壊された2代目ジプシー・ローズは、ボディが黄色く塗り直され、別の人へ譲られた。3代目のベース車両となったのは、1964年式のシボレー・インパラ。2ドア・ハードトップで、地元の警察から入手したという。
2代目を超える、意欲作にすることは当初から決まっていた。バラデスはひと夏を掛けて、塗装の準備を整えた。ウォルト・プレイと相方のドン・ヘックマンは、大きなボディに対峙した。115輪もの見事なバラの花を、手で描き込んだ。
花を1つ仕上がるのに要した時間は、1時間半ほど。さらに2000枚を超える葉と、フリーハンドの複雑なピンストライプ、ベールのようなグラデーションに、蜘蛛の巣がボディに描かれている。
最も目をみはる画面は、ルーフだろう。ピンクのメタリックフレークを下地に、細かいバラの花が何十輪も表現されている。話では、80Lものクリア塗料が用いられ、ボディをコーティングしてあるという。
「中にはやりすぎだと話す人もいますが、正しいと評価する人もいます。わたしは、とても楽しかったです」。と、塗装を手掛けたヘックマンが振り返っている。
夜にまで及んだペイント作業。ヘックマンはある朝、シンナー漬けになったクロスが、屋根に載っているのを目にした。布を取り除くと、シンナーが下地まで溶かしていたという。再びピンクイロのバラが描かれたが、その部分だけ明るく仕上がっている。
ピンク色のベルベットで覆われた車内
インペリアルズ・カークラブのメンバー、トーレスは、バラデスとともにプレイのショップを訪れ、インパラが塗られていく様子を見ていた。「プレイは、バラや葉を入念に描いていました。最終段階でも、永遠に作業が続くように思えました」
「数カ月後、プレイのショップを訪れると、その姿に深く驚きました。昼夜問わず、働いていたのでしょう。手で描かれていく様子を見るのは、素晴らしい体験でした。沢山の時間を要し、忍耐が必要だったはず」
「細い筆で、螺旋を描く様子も覚えています。何もないところから線が生まれました。キャンバスへ向かう画家のように、彼らはクルマに向かいました。特別な仕事でしたね」
見事にカスタムされたインテリアが、ボディを引き立てた。車内のほぼすべてが、ピンク色のベルベットで覆われている。
センターコンソールには、テレビと8トラックのプレイヤーが収まる。フロントシートは、ダッジ製のキャプテンシートに交換された。180度回転し、リアシート側と対面にできる。
「ハンティントン・パークにある、ギル・オート・アップホルスタリーという内装ショップによる仕事です。インテリアも面白く感じました。特にリアシート。完全にカスタムメイドで、バスタブのように包まれ感があります」
Cピラーの内側には、シャンデリアが吊り下がる。荷室側へえぐられた部分には、シャンパン・グラスが並ぶ。