【英国の道では味わいきれない】BMW M8コンペティション・グランクーペに試乗

公開 : 2020.09.06 10:20

感心するほどの姿勢制御と機敏さ

運転を始めてみる。大きなボディサイズは、常に気を使うことになる。

複雑に設定可能な、ドライブ・モードにも気が奪われがち。シャシーとステアリング、ブレーキ、四輪駆動システム、エンジンマッピングには、基本となる3段階の設定がある。シフトノブの横と、ステアリングホイールにも別のプリセットボタンが付いている。

BMW M8コンペティション・グランクーペ(英国仕様)
BMW M8コンペティション・グランクーペ(英国仕様)

モニター式のメーターパネルとヘッドアップディスプレイも、3種類から表示を選べる。ドライバー好みの設定を見つけるには時間を要するが、M8の動的性能の高さに、浸ることができるだろう。

筆者はエンジンが中間、ダンパーはソフト、四輪駆動はスポーツという組み合わせが好みだった。

M8グランクーペは、素晴らしい万能選手的な能力を備えている。姿勢制御や、安定性の高い機敏さには感心させられた。

四輪駆動システムは、基本的にリア側へ強く駆動力を掛かけてくれる。DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)をオフにし、後輪駆動モードを選べば、さらに楽しみの自由度は増す。

V8ツインターボ・エンジンのパフォーマンスも、ほぼ不満は感じないはず。0-100km/hの加速時間は、カタログ上では2ドアクーペと変わらない。

エンジンの個性として、爆発的にパワーを高めたり、ゾクゾクするようなサウンドを聞かせてくれるわけではない。それでも必要になれば、望んだだけのパワーを放出してくれる。穏やかに走っている時は、とても従順でもある。

ステアリングホイールの不自然な重みと、太すぎるリムは、気になる点の1つだ。

ボディサイズが大きすぎるスポーツカー

M8グランクーペのドライビング体験はイイ。ボディサイズが大きすぎる、スポーツカーといったところ。2ドアのM8でも同様だった。

一方で高性能が故に、英国の一般道ではその真価を味わうことが難しい。内に秘めたパワーを発揮することなく、狭い車線へ4本のタイヤを留めておくことに、運転時間の大部分を費やしてしまう。

BMW M8コンペティション・グランクーペ(英国仕様)
BMW M8コンペティション・グランクーペ(英国仕様)

わずかな輝きを、垣間見ることはできる。深くアクセルを踏んだ一瞬に。

グランドツアラーとして、M8グランクーペを長距離移動の相棒に選ぶにも、別のハードルがある。乗り心地が、コンフォート・モードでも落ち着きがなく、にぎやかななのだ。

コンフォート・モードより、硬い設定を選ぼうと思わなかったほど。速度の上昇に合わせて、乗り心地は良くなっていく。しかしこのクラスなら、ジキルとハイド的な、快適さと鋭さという二面性を備えているべきだと思う。

M8グランクーペの車内は居心地が良いだけに、残念。ポルシェ911の方が、快適性では上だろう。

特別感は高くはないものの、インテリアの素材は高級感に溢れ、シートは快適。身体のサポート性も素晴らしい。

選択に迷うドライブ・モードや、充実した運転支援システムを備えているが、全体的な車内の操作系は明瞭。インフォテインメント・システムのiドライブにはロータリーコントローラーが残され、ベンチマークといえるほど走行中の操作もしやすい。

ただし、技術面やスイッチ類などの多くは、下位クラスのモデルと共有している。

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