【詳細データテスト】ホンダe 広い室内 街乗りは快適で楽しい 航続距離が最大の難点
公開 : 2020.09.06 07:20
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
多くのユーザーが、その斬新なエクステリアデザインだけで、eの購入を決心することは十分に考えられる。
2017年に公開されたショーモデルのアーバンEVコンセプトは、もう少し大胆なスタイリングで、プロポーションもより完璧に近かった。それがそのまま市販化されなかったのを残念に思うのは、なにもわれわれだけではないだろう。
それでも、このクルマはじつにインパクトがあって個性的。ヴィジュアル的にアピールできる作品と呼べるものだ。
ホンダの市販EVの歴史は、ここにはじまったわけではない。1997年には、リースのみの実験的なものだったが、EVプラスと銘打った電動ハッチバックを発売している。
しかし、前例があるとはいっても、プラットフォームを既存車種から流用せずに、EV専用品の新規開発に投資したことは、自動車メーカーとしてなかなか思い切った決定だったといえる。
そのシャシーは全面的にスティール素材を用い、この手のEVの多くがそうであるように、リチウムイオン電池をキャビンの床下に積む。
ところが、ほとんどのライバルたちとは、モーターの搭載位置に違いが見られる。136psと154psの2仕様が用意される交流電動機は、リアに置かれて後輪を駆動するのだ。一方のフロントには、電力制御システムや充電器が設置される。充電ポートはボンネット上に用意される。
このレイアウトにより、前後重量配分は限りなく50:50に近づけることが可能になったというが、そのことはわれわれも実測して確認できた。だが、メリットはそれに限ったものではない。
戦後に大挙して生まれた小型乗用車の多くが証明していることだが、リアエンジンレイアウトはスペース効率を高めるのにきわめて有効なのだ。それゆえ、3.9mを切る全長から想像する以上に広いキャビンを、このクルマは備えている。
さらに、前輪ホイールハウスを広く取ることもできるので、大きな舵角を確保して、4.3mという最小回転半径を実現した。フロントよりリアの幅をワイドにしたホイールも、これに寄与する効果をもたらす。
サスペンションは四輪とも独立懸架で、マクファーソンストラットにコイルスプリングの組み合わせ。走りにこだわるドライバーにとっては、やる気を駆り立ててくれるセットアップだろう。
しかし、車両重量を知ったら、その気は多少なりとも削がれるかもしれない。テスト車は154psモーターを擁するアドバンス仕様で、実測値は公称値を下回ったものの、それでも1535kgあるのだ。
これは、2013年に計測したBMW i3を120kgも上回る。昨年テストしたMG ZS EVはクロスオーバースタイルのEVだが、このホンダのコンパクトEVより31kg重いだけだった。小さくても軽いとは限らないということになるが、それがコンパクトEVのスタンダードというわけではない。このクルマの場合は、ということだ。