【理想を目指したヴァンキッシュ】アストン マーティン・カラム・ヴァンキッシュ25へ試乗
公開 : 2020.09.08 10:20
ベース車両抜きで6300万円
3万2000kmのテスト走行を経て、サスペンションもチューニングされている。スプリングやアンチロールバーは新設計で、ダンパーはビルシュタイン製。車高は10mm低く設定された。
タイヤは、ドンフランチェスコご推奨のミシュラン・パイロットスポーツ。最高の性能を引き出せる足まわりに、仕上がっているという。
ステアリングホイールは一度すべて剥がされ、カラムが最も正しいと感じる形状へ、リムが加工し直されている。直径もやや小さく修正されている。
手間ひまの掛かった内容だから、安くはない。カラム・ヴァンキッシュを手にするには、自分のヴァンキッシュSを持ち込んだとして、45万ポンド(6300万円)が必要だ。チームにお願いして、最適なベース車両を探してもらうこともできる。
受注予定の台数は、25台に限られている。すでに予定台数の半分は、契約済みだという。このまま順調に、25台が売り切れるのだろう。
今回筆者が試乗したのは、カラムがオーナーの、6速MTのクルマだった。
インテリアの基本的な骨格は、もとの姿がわかる。しかし、すべての表面の質感は大幅に高められている。テクスチャーやカラーは、幅広い選択肢から選べるという。
シートは、完全にデザインし直されている。着座位置も低い。オリジナルのヴァンキッシュも、こうあるべきだった。
背もたれやドアパネルには、カラム・アブストラクト・タータンと呼ばれる、上品なグラフィックがあしらわれている。今後のカラム・モデルにも展開されるのだろう。
グランドツアラーとして性能を高める
ダッシュボードには、ブレモント製の懐中時計が収まり、取り外して持ち歩くこともできる。荷室には、マルベリー製のラゲッジセットが、コーディネートされる。
走り始めてすぐ、底なしと思えるほど豊かなパワーとトルクに気づく。V12が発するサウンドは、オリジナルのヴァンキッシュとは大きく異る。
エグゾーストは完全に新設計。その高音と低音に、バルブギアのクラシカルなメカノイズと、カムシャフト・ドライブ系統からの鳴き声が混ざる。4種類のサウンドが重なり、和音のように響いてくる。
エグゾーストの形状は、アンダーボディのディフューザー機能も果たしているという。
カラムとドンフランチェスコは、グランドツアラーとしての機能性と、ドライビング品質を拡張させたと話す。彼らが一番に目指した部分でもある。
エンジンは回転数を高めない限り、存在感はとても控えめ。そして、素晴らしいサウンドで楽しませてくれる。
ハードウエアは現代化され、乗り心地は引き締まっていながらも、フラット。グリップ力もターンインの応答性も、従来よりはるかに良い。
ブレーキは最新の、大径なカーボンセラミック製ディスク。見事に速度を落とす。
そんなカラム・ヴァンキッシュだが、筆者は2点、際立つ動的性能を挙げたい。1つは、素晴らしいステアリング。見事なまでに精度が高く、確実な手応えがある。新次元と呼べる洗練性を得ている。その結果、大幅に安定性が高められている。