【なぜマクラーレンにSUV計画ない?】ランボ/アストン参入するも…… マクラーレンの独自世界感とは?
公開 : 2020.09.04 05:50 更新 : 2020.09.04 08:24
製造面でもSUV投入は難しいはず
もう1点、マクラーレンがスーパーSUVに参入しない理由として、製造面での課題があると思う。
現在、マクラーレン・オートモーティブの生産拠点は、ロンドン南西部のサリー州ウォーキングにあるマクラーレン・テクノロジー・センター。2019年の生産実績を見ると、生産規模は年産4000台規模に留まる。
大手自動車メーカーのようなライン作業ではなく、台車に乗ったカーボンモノコックボディを中核に各種部品やV8ツインターボユニットが手作業で組み込まれている体制だ。
スポーツシリーズ、スーパーシリーズ、アルティメットシリーズシリーズに次いで、GTの量産を始めた現状で、同工場内でスーパーSUVを生産することは、物理的に難しいことは明らかだ。
ならば、ランボルギーニがサンタアガタ本社工場敷地内に、「ウルス」専用工場を新設したようなビジネスプランをマクラーレンが考えるのだろうか?
ウルスの製造工程で見るような、無人化ロボットを多用する手法は、レーシングシャシーコンストラクターというヘリテージが商品の記号性となっている現行マクラーレンには合致しないと思う。
また、現実的な課題として、新型コロナウイルス拡大の影響による3月から6月の一時的な製造停止を受け、事業の立て直し案を推進する中、新規工場の実現は難しいはずだ。
実は英国ブランドには多彩なSUVが
商品の記号性や生産体制など、メーカー側の都合だけではなく、そもそもユーザー側の主流な意見として「マクラーレンのスーパーSUVが欲しい」という声がない。
マクラーレンのユーザーとすれば、複数台の所有が当たり前。広いガレージ内、720Sの隣にウルスが並んでいる光景は、けっして珍しくないはずだ。
さらに視点を変えてみると、これからは新世代のブリティッシュブランドとしてのスーパーSUVの有り様と、マクラーレンの生き様が融合できうる時期かと思う。
つまり、ゴージャスなスーパーSUVは、ロールス・ロイス「カリナン」とベントレー「ベンティガ」。
上質スポーティなスーパーSUVならば、アストン マーティン「DBX」。本格的なオフロードSUVはランドローバー各モデル。EV系ならば、ジャガー「Iペイス」
改めて並べてみると、ブリティッシュブランドには多彩なSUV/クロスオーバーが目白押しだ。
こうした市場実態の中に、マクラーレンがスーパーSUVを導入することに、メーカーとして、またユーザーとして、意味があることなのかは、大いに疑問だ。
「マクラーレンは当面、スーパーカーブランドの中でも、尖りに尖った存在であり続けて欲しい」
夏空のもと、720Sと720スパイダーで四国と本州を結ぶ「しなまみ街道」を走りながら、そう願った。