【コンパクト・スポーツ3台の1番を選ぶ】M2 CS x 718ケイマンGTS x A110 S 前編

公開 : 2020.09.12 11:50  更新 : 2021.05.13 12:00

威勢が良いものの、格違いのエンジン

車内からの視界も、718ケイマンは全方向で優れる。一方でアルピーヌは、前方も横方向も、狭い窓から見渡すような気分になる。A110は、コンパクトであることを目指している。実際、小さい。

ケイマンGTSから降りて、アルピーヌA110 Sに乗り換える。これほど押し込まれたような感覚になるとは、想像もしなかった。

アルピーヌA110 S(英国仕様)
アルピーヌA110 S(英国仕様)

A110 Sのドライビング体験は、直接的で勢いがある。スポーツ・モードを選択すれば、292psを発生する1.8Lの4気筒ターボは唸り、エグゾーストは叫び、弾ける。とても威勢が良い。

シフトパドル付き7速デュアルクラッチATの、ショートレシオな中間ギアを使えば、みるみる速度を高める。一方で、心地よく回る718ケイマンの水平対向6気筒エンジンのサウンドや、豊かなフィーリングには及ばない。

高負荷時のアクセル操作に合わせて、回転数が100rpm増えるごとに、高まるエネルギーを感じ取ることは難しい。ポルシェで楽しめるように。

718ケイマンの、6気筒エンジンを味わい尽くすカギとなるのが、6速MTだ。だが、アルピーヌではMTが選べない。

アルピーヌが搭載するエンジンは、ホットなルノーメガーヌ譲りの4気筒ターボ。一方で、718ケイマンの方は、4気筒ターボへの批判に答えるように新開発した、まったく新しい自然吸気の4.0L。その違いは、試すまでもないかもしれない。

標準のA110とは異なる、A110 Sの性格

フラット6は滑らかにパワーを高める。音響的な高まりも素晴らしい。一方でA110 Sの方は、率直にいって過去のフラット4と比較するべきユニットだと思う。

A110 Sは常に、車重の軽さや機敏な操縦性に依存している。速度を保った滑らかな走りは、コンパクトさが握っている。シャシーの本領を発揮させるには、コーナーへ積極的に立ち向かう必要がある。

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0/BMW M2 CS/アルピーヌA110 S
ポルシェ718ケイマンGTS 4.0/BMW M2 CS/アルピーヌA110 S

攻め立てるほど、操縦性は引き締まり、敏捷性も高まる。同時に、フロントタイヤのグリップを見極める作業が、リアタイヤを操る以上に求められてもくる。

グリップレベルのバランスは、完璧というわけではない。アンダーステア傾向が強いようだ。

グリップ力は、明らかに標準のA110より高い。高速域での安定性にも優れる。それは、サーキットでの走行に焦点が向けられているから。Sの付かないA110とは、異なる性格だといえる。

標準のA110のようには、衝動的に道を走らせない方が良いだろう。Sへ与えられたステアリングの鋭さは、充分な重み付けや手のひらへ伝わる感触がなければ、扱いが難しい。標準のA110なら、そんな心配はいらない。

対してポルシェ718ケイマンは、ミツバチのようなアルピーヌA110 Sには備わらない、丸さと落ち着きがある。だが、路面からの垂直方向の強い入力があると、車重の重さは感じられる。完璧ではない。

この続きは後編にて。

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