【縁の下の力持ち】アンチロールバーの仕組み 運転の楽しさに直結
公開 : 2020.09.24 11:20
シンプルな作りにもかかわらず、走りに与える影響はとても大きいアンチロールバー。高級車やスポーツカーなど幅広い車種に用いられ、足回りでも非常に重要なパーツとなっています。その仕組みと効果についてご紹介します。
ハンドリングや快適性に貢献
クルマがこれほどまでに複雑になってしまった世の中で、サスペンションシステムにおける重要なパーツの1つは、いまだにシンプルだ。
それは、コーナーでのボディロールを抑制するためのアンチロールバーである。スタビライザーバーやスウェイバーとも呼ばれるが、ロールケージと混同しないように。ロールゲージはクルマが横転したときに乗員を保護するためのものだ。
一般的には、U字型のスチールバーやチューブで、車軸の両端でサスペンションに接続されている。クルマによっては2本(フロントアクスルとリアアクスル)のものもあれば、1本だけのものもあるし、全くないものもある。
アンチロールバーの目的は、サスペンションスプリングの剛性(レート)に大きな影響を与えることなく、コーナーを曲がるときにボディロールを減らすこと。市販車に装着することで、過度のロールを抑えつつ、スプリングとダンパーのレートを快適に保つことができる。
ロールが大きすぎると不快感を与え、サスペンションが極端に動くとホイールやタイヤの角度が変化し、コーナリングの安定性に影響を与える。
アンチロールバーのテールは、左右のサスペンションにブッシュやリンケージで連結されており、機械的にはシンプルだが、ハンドリングバランス、つまりアンダーステアやオーバーステアにも影響を与えるため、その効果は少し複雑だ。
シンプルながら効果は大きい
アンチロールバーの長い直線部分は、センターラインに対して直角にボディに固定され、両端を90度にカーブさせてサスペンションのポイントを拾う。
クルマがロールを始めると、バーはその動きに沿ってねじれ、ボディの重さがサスペンションリンケージ、アウターホイール、タイヤの接触面に伝わる。
タイヤにかかる下向きの力が大きくなると、摩擦係数が減少し、タイヤのスリップ角が大きくなる(タイヤは、ホイールの方向に対して横方向に動き始める)。
アンチロールバーをフロントアクスル側で強くすると、結果としてアンダーステアになる。逆にリアの方が硬くなるとオーバーステアになる。
つまり、アンチロールバーは、ボディロールの制御以外にも、ハンドリングバランス(ニュートラルスロットルでのアンダーステアやオーバーステア)にも影響を与えることができるのだ。レーシングカーでは、アンチロールバーの設定を変更することで、サーキットやコンディションに合わせたチューニングを行うことができる。
アンチロールバーは基本的にはシンプルな装置だが、より複雑なアクティブ・アンチロールバーも存在する。ステッパーモーター(時には油圧アクチュエータ)が、アンチロールバーのねじれ部分を分割することで、その力を変化させることができる。
バーが不要な場合には、凹凸のある路面での乗り心地を向上させ、コーナリング時には数ミリ秒でねじれ剛性を回復させることができる。
フォルクスワーゲン/アウディのステッパーモーターは、小型のエピサイクリックギアを搭載しているが、油圧アクチュエータを搭載したものもある。
このシステムは、高級車やフォルクスワーゲン・ティグアン、アウディQ5などのSUVに採用されている。また、デカップリングにより、オフロード走行時のサスペンションのアーティキュレーションが向上する。