【新型メルセデス・ベンツSクラス】BMW 7シリーズ/アウディA8との単純比較、無意味になりつつあるワケ
公開 : 2020.09.08 10:24 更新 : 2020.09.08 12:23
「S、E、C」クラス時代の終焉か?
ESG投資重視という、これまでの自動車産業の流れが大きく変わる中、高級ブランドのハードウエアとしての在り方にも変化が見える。
直近では、Aクラスからマイバッハや各種AMGなどフルライナップ化されたメルセデス・ベンツ。そうしたモデルの多様化の原点は、70年代のSクラス登場と、Sクラスをラグジュアリーセダンの最高峰とした、Eクラス、Cクラスというヒエラルキーを強調するブランド戦略だ。
メルセデス・ベンツをベンチマークとして、BMWは7シリーズ/5シリーズ/3シリーズ、またフォルクスワーゲングループはアウディブランドでのA8/A6/A4を導入。
さらに、アメリカ市場優先で誕生したトヨタがレクサスが、LS/ES/ISとしてきた。
そのため、これまでSクラスのフルモデルチェンジの度に、7シリーズ、A8、LSとのボディ寸法、内外装デザイン、車体やサスペンション、衝突時の安全性、エンジンラインアップとそれらの性能について単純に比較してきた。
その上で、AMG、M、RS、Fなどハイパフォーマンスな上級グレードによるサーキット走行性能などを単純に比較してきた。
だが、今回の新型Sクラスを契機に、メルセデス・ベンツの商品戦略が根本的に変わった印象が強いのだ……。
キーワードとなるのが「UX」
キーワードとなるのがUX(ユーザーエクスペリエンス)だ。
すでに「ハイ、メルセデス」と発話して始める車内音声認識などで、UXという考え方を強調しているメルセデス・ベンツ。
一方、アウディは2010年代前半から世界最大級の家電IT見本市「CES」を舞台に、自動運転を中心として、またBMWは電動化「i」やBMWコネクトを強調して、UXに対する新しい見解を示してきた。
そうした中で登場した、新型Sクラスは、BMWやアウディなどとの競争や協業という考え方ではなく、商品の出口戦略として、ユーザーに対して直面している印象が強い。
ハードウエアとして、搭載する様々なソフトウエアアプリケーションの全てに対して、さらにそこから生まれる様々なサービス事業に対して、ユーザーとSクラスが対峙する。
これぞ、UXである。
結果として、メーカーとディーラー、ディーラーとユーザーとの関係にも、新型Sクラス登場をきっかけとして、メルセデス・ベンツは大ナタを振る可能性もある。
これまで、Sクラスはラグジュアリーセダンの頂点であり、そこを上流として、最新技術が各メーカーへと大きな影響を与えてきたが……。
新型Sクラスは、ドイツのライバルたち、そして日系メーカー各社に対して、パラダイムシフトと呼べるほど大きなインパクトだと言える。