ジープ・グランドチェロキー

公開 : 2013.11.04 19:11  更新 : 2017.05.29 18:34

どんなクルマか

グランドチェロキーがマイナーチェンジを施した。4世代目となる現行型に少々手が加わった。簡単に言うと、マスクやインテリアのデザインが変更され、トランスミッションが多段化された。5速だったATが8速になったのだからスムースドライブはもちろん省燃費だって期待でする。7速からオーバードライブ的な感覚だ。さらに足回りのセッティングを変更。オンロードをスポーティに快適に走る足を目指した。いまやSUVとてオンロード性能を求められる時代。ジープというオフロードの看板を持っていようと妥協は許されないのだ。

グレードは3.6リッターV6を持つリミテッドとラレード、それと5.7ℓV8のサミット、さらに6.4ℓV8のSRT8というラインナップ。2世代目から採用されていた4.7ℓV8はすでに姿を消した。そのパフォーマンスはV6でカバーできるという算段である。

現行型の特徴はエアサスが装備されていること。リミテッドとサミットがそれを採用する。長くジープをウォッチしてきた立場から言わせてもらうと、信じられない進化ぶり。車高を上げて各アングルを稼ぐのだからロックセクションでの走破性は確実に上がったはずだ。ただ、それなしでやってきたのがジープ。硬派なロジックに共感してきた分寂しくもある。まぁ、それだけこのクルマにお金をかけられるようになったというのが本音のところだろうが。

そんな技術を持った背景にはメルセデスの存在がある。このクルマの足回りにはMクラスの技術が入っているからだ。発売されたのはクライスラーとメルセデスが分離した後だが、技術提携の契約は生きていた。もちろん、それがヨーロピアンSUVに負けないパフォーマンスのベースとなっているのはまぎれもない事実である。

ドライビング・インプレッション

試乗したのはラレードとリミテッドである。デリバリーの関係上V8とSRT8は試乗会に間に合わなかった。

では、乗った印象だが見た目の堂々としたスタイリングよりも軽快なフットワークでワインディングを駆けた。動きだしからエンジンの力強さが先に出てシャシーの重さを感じさせない。

おもしろいのは、低速から中速域とさらにその上ではフィールが変わること。パワステのセッティングがそうで、低速では切りはじめの遊びが気になったが、それ以上ではステアリングに重みが加わりコントロール性能を高める。

これはアメリカにおけるトーイング(牽引)文化と関係する。モーターハウスを引っ張る彼の地の使われ方では、こうした最低限のステアリングの遊びは必要だからだ。

足のさばきもおもしろい。ワインディングで速度域が上がるとどんどん運転が楽しくなってくる。リアサスペンションの粘り腰もそうだし、鼻先をイン側にクイクイ向きを変える感じもいい。

ただ低速時においてエアサスの恩恵はあまり感じない。路面の段差などを瞬時にこなすというより、少し残す印象。この辺は機械式のバネの方がうまく納める気がする。エアサスは高速走行に期待だ。

ホメたいところ、ホメられないところ

このクルマはユニークな存在である。ハードウエアにドイツメーカーのノウハウが入り、インテリアではイタリアメーカーのデザインが注入される。ジープという保守的なブランドイメージとはかけ離れた頭のやわらかさだ。つまり、いいとこ取りである。

ただジープブランドの高級SUVというポジションなのでプライスレンジも高くなる。ラレードは400万円台前半、リミテッドは500万円台中盤となる。北米でこのクルマが好調なのは3万ドル前後のレンジがあるから。その意味じゃ300万円台のグレードをひとつ追加してほしいところである。

(九島辰也)

ジープ・グランドチェロキー・ラレード

価格 4,273,500円
燃費 8.6km/ℓ(JC08モード)
乾燥重量 2160kg
エンジン V型6気筒3604cc DOHC
最高出力 286PS/6350rpm
最大トルク 35.4kg-m/4300rpm
ギアボックス 8速オートマティック

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事