【時代を先取りしすぎた】ホンダ・エレメントとは、なんだったのか? 北米でスマッシュヒット 日本で苦戦した背景
公開 : 2020.09.11 05:50 更新 : 2021.10.13 12:20
ホンダ・エレメント、覚えていますか? 写真をご覧になれば「あ、あったな」と思う読者が多いかもしれません。北米でスマッシュヒットしたこのクルマ。日本でうまくいかなかった理由を考え、振り返ります。
北米市場で大ヒット中のホンダSUV
もはや一過性の人気というよりも定番車種となった感さえあるクロスオーバーSUV。トヨタなどはRAV4、ライズ、ハリアーと立て続けに新型モデルをリリースし、どれもがヒットしているのはご存知の通りだ。
しかし、その一方で苦戦を強いられているのがホンダではないだろうか?
たとえば2018年に2年振りの国内販売復活となったCR-Vは、残念ながら他メーカーのライバルの後塵を拝しているというのが実情だ。
しかしそんなCR-Vも北米市場に目を向けてみると、2019年度はなんと38万台もの台数を販売している。
同年の日本国内では1万3000台であるから、30倍近い差があるということになるのである。
つまり、現行モデルのCR-Vは日本国内ではなく海外、特に北米市場を意識して開発されたモデルであり、その目論見通り北米市場で大ヒットしているということなのだ。
そもそも現行CR-Vは2016年にはすでに北米市場でデビューしており、そこから2年後の2018年に日本のSUVブームに乗る形で日本での販売を再開したというのが実のところと言える。
そんなことを考えていて、ふと過去にもそんなホンダ車があったことを思い出した。
それが、2003年に日本に投入され、2005年には販売を終了していたクロスオーバーSUVのホンダ・エレメントである。
エレメント、発想は悪くなかった?
ホンダ・エレメントは、アメリカ・カリフォルニア州にあるホンダの現地法人が運営するデザインセンターで生まれたモデルであり、2001年の北米国際オートショー、いわゆるデトロイトモーターショーにて「モデルX」の名前で発表された。
このモデルXにはオーバーフェンダーからフロントバンパー、ライトグリルまでが一体となっているようなデザインや、センターピラーを持たない観音開きのドア、完全にフラットなフロアに、リアのルーフが前方にスライドし、リアウインドウが下がって荷室をピックアップトラック的に使えるギミックなど、コンセプトカーらしいデザインを随所に散りばめていたのだ。
しかし、2002年末に登場した市販版のエレメントは、モデルXとほぼ同等のスタイルのまま。前述した特徴のうち、市販版で省かれたのはリア周りのギミックのみだったのである(その名残か、一部グレードで後部座席上にサンルーフが用意された)。
20代前半の若いユーザーをターゲットとしたエレメントは、ライフガードステーションをモチーフとされており、10フィートのサーフボードを積めることを前提に開発されたもので、大ヒットとはいかないまでもスマッシュヒットを記録し、2010年末まで生産が続けられるロングセラーモデルとなっていた。