【なぜ、しっくりこない?】EVのハマー/マスタング・マッハE/日産アリア 高級な電気自動車、社会の「別腹」?
公開 : 2020.09.13 05:50 更新 : 2021.06.04 11:13
日産「アリア」もトレンドを追った?
テスラ、さらにポルシェをベンチマークとする、プレミアムEV。
当然、日産が満を持して発表した「アリア」も、こうしたトレンドを強く意識している。
第一に、外観デザイン。いかにも、プレミアムEVである。
第二に、AWD。日産お得意のマーケティング用語として、e-4ORCEと名付けた。
第三に、加速性能。0-100km/h加速は最上位グレードで5.1秒。
第四に、大出力の急速充電。CHAdeMOでの150kW充電器で、130kW充電を想定した充電時間を公表した。
注目は価格だ。
エントリーモデルの実質的な購入価格は約500万円見込み、という表現だ。つまり、国や地方自治体からの環境車対応の購入補助金などを想定しており、車両価格は600万円程度になるだろう。
こうした価格設定は、直接的なライバルになる、テスラの各モデルや、マスタング・マッハEをベンチマークとしていることは間違いない。
ただし、このようなベンチマークに対する商品開発はガソリン車と変わらず「EVならでは」という発想が見えてこない。
これがプレミアムEV市場の現実だ、と思えば良いのかもしれない。
だが、EVという次世代の乗り物を考える上で、疑問が残る。
いわゆる、EV三重苦という言い回しがある。
航続距離が短い、充電時間が長い、価格が高い、という3要素だ……。
EV三重苦 解決するために2つの流れ
技術者はこれまで、EV三重苦を解決するため様々な開発を進めてきた。
その結果、EVには大きく2つの流れができた。
1つは、これまで紹介してきたプレミアムEVだ。
航続距離を稼ぐため、電池容量を大きくした。そうなると充電時間が長くなるため、充電器の出力を上げた。価格について、プレミアムという商品カテゴリーとすることで吸収した。
もう1つが、電池容量を抑え価格を抑えた、シティコミューターとしてのEVだ。
商品の幅は広く、小さいものではトヨタが今年後半に発売する超小型車。中小型になると、ホンダ「e」、マツダ「MX-30(EV版)」、さらに「リーフ」(ノーマル)も含まれると思う。
本来EVは、ガソリン車/ディーゼル車の代替という発想ではないはずだ。
コネクティビティ技術を活用し、効率的な移動と充電を計画的に行い、環境負荷を下げる。そうした観点で訴求されてきたはずだ。
ところが、現時点でEV市場をけん引しているのは、ガソリン車の代替的イメージが強いプレミアムEV。
一方、シティコミューター的イメージが強い、中小型EVの普及の方向性は、未だ不透明だと言わざるを得ない。なぜならば、ユーザーが生活における移動の考え方を変える必要からだ。
まさに「新しい生活様式」という発想だ。
そんな時代は本当にやって来るのだろうか?