【余命を伸ばすレストア】デューセンバーグ・モデルSJ 世界最高を復活させる 後編
公開 : 2020.09.27 16:50 更新 : 2020.12.08 08:38
生き続ける力を与えてくれた
「ロックやツマミなど、手作業で整形した部品も多いです。アーノルドは金属の塊から何でも作ってしまう。今まで出会った職人の中で、最も素晴らしい技術を持っています」
献身的な努力の毎日を重ね、小さなチームはデューセンバーグを6か月で仕上げた。オーナーのジャックは、驚き、深く感謝した。
ラリーが、完成したデューセンバーグとジャックとの対面を思い出す。「わたしも、喜びでいっぱい。仕上がったモデルSJを、ジャックの玄関先に停めました」
「ところが、ジャックはクルマに乗れなかったんです。運転できませんでした。父の身長は、195cmほど。年を老いて少し縮んではいますが、長い足が収まらず、クラッチを踏めませんでした」
「あいにく父は運転できませんでしたが、いつもわたしにこういいます。あなたはわたしの分身です、と」
デューセンバーグは、素晴らしいアメリカン・クラシックだ。しかし、ジャック・テバーグと息子のラリーとの愛情やプライド、親子関係も同じくらい素晴らしい。
ボルト1本までが新車時以上に美しい、デューセンバーグ・モデルSJ。その見事な容姿は、ガン宣告を受けた父の夢を叶えるために費やされた、美しい時間を反映している。
「わたしの父は、まだ生きています。病と戦うほどの喜びを与えてくれました。生き続ける力を与えたんです」