【上級ハッチバック対決】アウディA3 vs BMW 1シリーズ vs メルセデス Aクラス 後編

公開 : 2020.09.22 10:20

アウディA3がモデルチェンジを果たし、ジャーマン3のハッチバックが出揃いました。FFになったBMW 1シリーズと、スタイリッシュなAクラス。高価格帯のハッチバックのAUTOCAR的ベストはどれなのか、評価します。

しなやかで乗り心地に優れるAクラス

text:Simon Davis(サイモン・デイビス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
乗り心地の快適さや、路面の凹凸に対するいなし方では、メルセデス・ベンツAクラスが有利。サスペンションは快適志向といえ、高速道路での運転にピタリとハマる。ただし、しなやかで柔らかいスプリングは、良い面だけではない。

速度域の高い郊外の道を走り、サスペンションへ縦横に掛かる負荷が高まると、姿勢制御がゆるく感じられてくる。グリップ力は十分だし、ステアリングの操舵感は正確で重み付けも良好ながら、落ち着きで陰りが出てくる。

アウディA3スポーツバック35 TFSI Sライン/BMW 118i Mスポーツ/メルセデス・ベンツ A 200 AMGライン・プレミアム
アウディA3スポーツバック35 TFSI Sライン/BMW 118i Mスポーツ/メルセデス・ベンツ A 200 AMGライン・プレミアム

エンジンは、中回転域でのトルクが太く、今回の3台では一番楽に速く走れる。ただし、高回転域での磨き込みも足りないようだ。ATは、アクセルペダルを特に深く踏み込まなくても、キックダウンをしたがる。少し過敏で、印象を下げる要因となっている。

他方、BMW 1シリーズは、引き締められ車高の落ちたMスポーツ・サスペンションを装備。Aクラスより姿勢制御はタイトで、しっかりボディをコントロールできている。それでいながら、快適性も大きくは犠牲になっていない。

しなやかさではA200には及ばない。幅225もあるフロントタイヤが、大きなロードノイズを立てる。

そのかわり、スプリングとダンパーの伸縮時の振る舞いには、好印象な洗練性を感じる。ハイスピードでのコーナリング時では、横方向の荷重移動の制御にも優れる。

動的性能で強い印象が残らない1シリーズ

ステアリングは、切り始めの反応が鋭く、スポーティな味わいが濃い。だが、フロントタイヤのグリップが、少々足りていない。スリップ量は充分調整できる範囲で、もしかするとテスト日の35度を超える暑さのせいだったのかもしれない。

昨年試乗した1シリーズでは、こんな感触はなかったと記憶している。ただし路面温度が影響していても、ドライバーズ・ハッチバックとして、118iが特に秀でた選択というわけでもなさそうだ。

BMW 118i Mスポーツ(英国仕様)
BMW 118i Mスポーツ(英国仕様)

1シリーズが搭載する3気筒エンジンは、軽快に吹き上がり、高回転域では驚くほどに滑らか。しかし、アイドリングや低回転域では、ラフさが伝わってくる。エンジンのパンチ力や、トランスミッションの仕草も印象が薄い。決して悪くはないが、それ以上でもない。

ではアウディA3はどうだろう。インテリア開発のコストを、動的性能に回したのかもしれない。でも、実際の走り味を確かめてみると、大きく進化したとも感じられない。

姿勢制御は、Aクラスより引き締められている。それでいて市街地の継ぎ接ぎだらけの路面でも、充分快適に思える柔軟性も備えている。

フロントグリップは高く、高速コーナーでのニュートラルな挙動が気持ちイイ。ステアリングの操舵感は直感的で、ドライバーの操る自信を引き出してくれる。

ステアリングホイールを切り込んでいくと、手応えが一気に大きくなる。レスポンスは、BMWの切り始めほどクイックでもない。正確性は高い。A3の動的性能は、Aクラスと1シリーズの中間だといえそうだ。

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