【国産スポーツカーの象徴】日産フェアレディZ、なぜ「原点回帰」と言わない? マツダ・ロードスターと根本的な違い
公開 : 2020.09.18 05:50
日産Z、ロードスターとは時代が違う
ライトウエイトスポーツカーとしてのロードスターNAからNDまでの進化と、フェアレディZのS30と次期Zまでの進化は、進化の幅のみならず、進化の種類が違う。
フェアレディZの場合、歴代Zの進化を振り返ってみれば分かるように、ボディサイズやエンジン出力で大きな差を考えると、S30と次期フェアレディZはまったくの別物だといえる。
さらに言えば、企業体質の進化も大きく影響している。
S30の開発時期は、NAより約20年も前の1960年代である。
この頃の自動車メーカーの社内組織について、各社OBから直接話を聞くと、開発部門の花形部署はエンジン開発だったという。
良いエンジンができ、それに合わせた車体を仕立てて、そこにデザインが加わるというのが一般的な流れだった。
デザインについては、社内デザイナーだけではなく、イタリアのカロッツェリア(デザイン設計企業)などに委託するケースも多かった時代だ。
こうした様々な見地から、S30に対する当時のモノづくりに対する原点回帰を、次期フェアレディZに当てはめることは事実上、不可能なのだと思う。
見方を変えると、次期フェアレディZはS30への原点回帰ではないこと自体が、クルマとしての商品価値だともいえる。
Zの楽しみ方、時代変化を体感すること
結局、次期フェアレディZが目指すのは、原点回帰ではなく、日産が輝かしかった「あの頃」の気持ちをメーカーとユーザーが共有し、新しいZを愉しむことだと思う。
プレスリリースで、アルバイサ専務執行役員が「レトロモダンなテーマと、フューチャリズムを組み合わせることがわれわれの挑戦でした」
「デザイナー達は、歴代のモデルを振り返り、数えきれないほどのスケッチを描き、多くの議論を重ねて、このフェアレディZコンセプトにたどり着きました」とデザイン開発のプロセスを説明している。
結果として、シルエット全体がS30っぽさ、フロントライトにもS30っぽさ、リアビューにZ32っぽさを感じるトータルデザインとなった。
今回の発表内容でも明白なように、デザイン優先感が強い次期フェアレディZ。
では、スポーツカーとしての本筋である、走りはどうなのか?
記者会見では「人馬一体」という表現が何度が登場しているが、走行中にふとS30を感じるような車内の空気を感じることができるのだろうか?
それとも、S30、Z32、そして直近のZ34とはまったく別の、新Z感が創出されているのだろうか?
2021年、いや2020年内にもしかすると開催されるかもしれない、プロトタイプ試乗会を楽しみに待っていたいと思う。