【空冷エンジンの現役トリオ】ホンダN360 VWビートル シトロエン・アミ 前編

公開 : 2020.10.03 07:20  更新 : 2021.03.05 21:42

ホンダのブレークスルーになった1台

ホンダN360が英国で発売されたのは、1968年。当時は560ポンドだった。最大のライバルは、BMCブランド時代のミニ。排気量は850ccで、価格はほぼ同じだった。つまり、N360はとても希少。

当時の日本では軽自動車として、360cc以下なら税制的な優遇が受けられた。軽自動車用の運転免許証が存在し、取得が簡単だった時期もあった。でも英国では違った。

ホンダN360(欧州仕様/1967〜1970年)
ホンダN360(欧州仕様/1967〜1970年)

装備は充実していた。ヒーターやバックライト、ガラスのウオッシャーなどが付き、少ないながらN360ファンを生んだ。しかし、大きく速いミニと競うことはなかった。

日本市場では、N360はホンダのブレークスルーになった。日本では1967年に発売が始まり、1966年と比較してホンダの乗用車の販売台数は、3209台から8万7000代へと飛躍的に伸びている。

N360に続いて、N400やN500、N600へと排気量の大きいモデルが追加。1969年には延べ50万台の、Nシリーズを生産するに至っている。

ホンダらしいのが、当時の軽自動車では20ps以下が普通だったにも関わらず、31psも得ていた点。しかもホンダは、1962年に自動車作りを始めたばかりだったのだ。

エンジンは空冷式の直列2気筒で、チェーンを介してクラッチへパワーを伝えた。ミニと同様に、前輪駆動。トランスミッションはオイルサンプ内にレイアウトされていたが、バイク譲りのドグミッションを採用している。

SOHCで、スターター・ジェネレーターを搭載。354ccの排気量から、英国仕様では28psを発揮した。当時としても、異例なほど大きいサウンドを放ち、最高速度は112km/hに届いた。しかしジャーマンは、88km/h以上の速度では走らないそうだ。

フィアット500より100倍は優れている

2019年11月には、NECクラシック・モーターショーまでの遠い道のりをドライブし、出展している。いつもは、自宅周辺で楽しんでいるという。

このN360はフランスで認証を受けた後、新車としてイタリアで販売されている。「イタリアに大きな市場があったとも思えません。でも、フィアット500より100倍は優れていますよ」。と笑うジャーマン。

ホンダN360(欧州仕様/1967〜1970年)
ホンダN360(欧州仕様/1967〜1970年)

「はるかに速く、作りも良い。おそらく、信頼性も高いでしょう。ですが、エンジンの耐久性は、これらのクルマのアキレス腱です。基本的に、バイク向けの技術を応用しています。バイクは、そんなに走行距離が伸びませんからね」

「このN360は、一度エンジンを交換しています。定期的なエンジンオイル交換が、維持のうえで重要です」。と説明するジャーマン。タイヤはミニと同じサイズ。オイルフィルターは、ホンダから今も購入できるという。

エンジンも素晴らしいが、クルマとしてのN360に、かなり惹かれる。ボディサイズは、フィアット500とほぼ同じ。ボディーの四隅にホイールが収まるプロポーションは、ミニから着想を得ているのだろう。

全長は3mを切り、可愛らしい。でも、マイクロカーのように、コミカルさはない。実用的なリアシートと荷室があり、英国製のライバルに匹敵する車内空間が確保されている。トランクリッドはプラスティック製で、ラジオのアンテナはBピラーの上に伸びる。

この続きは後編にて。

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