【課題とジレンマ、浮き彫りに】電気自動車が普及するのはいつ? カストロールが調査
公開 : 2020.09.23 20:50
理想からは程遠い現実 バッテリー価格
航続距離に対しては、法人ユーザーの方が一般の回答者よりも要求が高かった。英国では、法人ユーザーが将来の航続距離を715kmと想定していたのに対し、一般のドライバーは444kmと大きな差が開いた。米国では516km、ドイツは470kmとなっている。
今回の調査では、EVの「ジレンマ」が浮き彫りになった。価格、航続距離、充電時間という3つの条件は、現在、相互に対立している。一般のドライバーが望む航続距離と充電速度を備えたEVを作れば、この調査で示された希望価格で販売することはできなくなる。
キアのe-ニロは、417kmの航続距離(AUTOCARによるテスト)と、100kWのDC急速充電器により0%から80%まで54分で充電できる。おそらく、カストロールの調査で示された仕様の概要に最も近いものになっていると思われる。
しかし、販売価格は3万6850ポンド(497万円)と、希望金額を大きく超えている。充電時間もインド人の我慢の限界(35分)よりはるかに長い。
そもそも、54分間の充電ではバッテリー容量が80%にしかならず、航続距離は386km以下にまで落ちてしまう点にも注意が必要である。
今回の調査で示唆された、EVはガソリン車やディーゼル車と同じくらいの速さでエネルギーを補給すべきだという考えは、自動車メーカーにとっては目を見張るものがある。
なぜなら、現在の150kWhの充電器では10分で160km分の航続距離を稼げるはずだが、バッテリーの異常発熱を防ぐためにも充電の上限が80%に制限されているのだ。現状では、いくら急速充電を使っても限界がある。
よりスピーディに充電を行うためには、より高度な車載電気システムとバッテリーの冷却装置が必要になる。
議論は、EVを手頃な価格に抑えながらも、まともな航続距離と急速充電を実現するという、難解な問題に戻ってくる。バッテリーの価格を1kWhあたり100ドル(1万円)未満にすることが、普及のための大きな課題なのは明らかである。
充電器 1日500基のペースが条件
カストロールの調査に続いて、英国の自動車製造販売協会(SMMT)は独自の調査を発表。英国におけるEVの大量使用に適した充電インフラの整備の問題点を浮き彫りにしている。
SMMTによると、「購入者を(EV購入から)遠ざけている最大の要因は、購入価格の高さ(52%)、地域の充電施設の不足(44%)、長距離移動の際に不足することへの恐怖(38%)」であるという。
同協会は、2025年までにEVの販売台数を英国の市場シェアの28%まで上げるために、すべてのゼロエミッション車のVAT(付加価値税)免除を要求している。
しかし、英国政府が示している2035年の完全なEV化に向けたエネルギー供給の背後にある厳しい状況は、最も憂慮すべきものである。
SMMTとコンサルタント会社の詳細な分析によると、英国の新車市場で完全なゼロエミッションを達成するには、10年後までに170万基、2035年までに280万基の公共の充電ポイントが必要になるという。
現在、路上に設置されている充電施設がわずか1万9314基しかないことを考えると、2035年までには1日あたり507基を設置する必要があり、その費用は167億ポンド(2.2兆円)に上る。