【イタリア製のオープン・リムジン】フィアット2800ロイヤル・トーピドー 前編
公開 : 2020.10.04 10:20 更新 : 2020.12.08 08:38
フィアット製のフラッグシップ・サルーン
1920年代の初めに、6.8LのV型12気筒エンジンを搭載したスーパーフィアットを北米向けに計画。1921年のパリ・サロン(モーターショー)で発表されるが、話題を集めることもなく、3台か5台のみが作られた。
1930年にも、ティーポ530ストレート・エイトを設計するものの、詳細不明のまま姿を消している。威厳のある公用車の制作をフィアットが受けたとき、当時の技術者、ダンテ・ジャコサは量産までの順序立てに悩んだことだろう。
トッポリーノの開発にも関わったジャコサは、大きなクルマは好きではなかった。小さく、合理的なクルマの開発に注力していた。だが、リアエンジンのリムジンは商業的に成功しないことは、理解していたようだ。
1938年のパリ・サロンに初めて姿を見せた、フィアット2800。フォーマルな6気筒エンジンをフロントに搭載していたが、基本的には1500をスケールアップしたような内容を持つ。シャシーは、508Cにも似た十字形を採用し、取り立てて先進的とはいえないクルマだった。
イタリアでは、ボディサイズではなくエンジンの排気量で自動車の税金が決まる。2800も堂々とした車格の割に、2852ccと比較的小さい。
エンジン自体は、ショートストロークの新しい直列6気筒で、とても滑らか。軽量化のために、スチール製のブロックへ、アルミニウム製のヘッドとサイドプレートが組み合わされている。
1800kgの車重に86psの直6エンジン
4000rpmまで回り、最高出力は86ps。4速MTには、1速以外にシンクロメッシュが備わる。大型サルーンの使用目的を考えると、低速域から高いギアで滑らかに加速する能力が重要視された。比較的軽量なバージョンなら、最高速度は128km/hまで出たという。
ジャコサとしては、パワーに対する車重の大きさは、憂慮したひとつだった。ランチア・アスチュラもアルファ・ロメオ6C-2300も、軽くはなかったが。
サスペンションは、フロントがトレーリングアーム式の独立懸架、リアがリジットアクスル。車重は1800kgを超え、自動調整式のブレーキと、適度な重さのステアリングにも腐心されている。ヘッドライトのウオッシャーや、ウインカーのセルフ・キャンセリング機能などは、80年前の水準では相当に高級な装備といえた。
イタリアの内務省は大臣用リムジンとして、フィアット2800を12台単位でまとめて注文。ボディはファリーナやベルトーネ、カスターニャといったコーチビルダーに託された。
依頼先のコーチビルダーは違っても、ボディスタイルは内務省が指定する、同一の規格に準拠された。6ライト・ウインドウの7シーターで、ホイールベースは3200mmだ。
クローズドボディの場合、GMのビュイック製ボディをもとに作られている。2800では、フィアット独自のVグリル、別名ムッソリーニ・グリルが特長だった。
この続きは後編にて。