フォルクスワーゲンe-ゴルフ
公開 : 2013.11.09 21:00 更新 : 2017.05.29 18:58
■どんなクルマ?
フォルクスワーゲンで2番目となる電気自動車がこのe-ゴルフだ。e-Up!に続くフォルクスワーゲン2番めのゼロ・エミッション・モデルとして、来春には英国で販売される予定のモデルだ。フォルクスワーゲンのR&D部門のハンス・ジェイコブ・ノイサーによれば、その価格は最近デビューしたばかりのBMW i3よりも安いという。
フォルクスワーゲンe-ゴルフの開発には非常に時間が掛かったといえる。ドライブラインの成熟は比較的早かったために、内部ではもっと早く発売したいという意見もあったようだが、最終的にパフォーマンスと航続距離が問題となった。また、最新のゼロ・エミッション・ビークルをアピールするために、民衆の意見や政治的圧力がより高まるより遅い次期、つまりゴルフ・ラインナップの最後にこのe-ゴルフを持ってきたのだともいう。
フォルクスワーゲンは、潜在的な電気自動車の顧客は、BMW i3や日産リーフ、ルノー・ゾーイとは異なり、その先進的なスタイルよりも日常での実用性を重んじていることがマーケット・リサーチで掴んだ。その結果、非常に保守的なアプローチではあるが、7代目ゴルフのスタイルに電気自動車の技術を搭載することにしたのである。
従って、パッと見、e-ゴルフは、グリルに入れられたブルーのストライプや、e-ゴルフのバッジ、フロントとリアのフルLEDランプなどが通常のゴルフと異なるぐらいで、ほとんど見分けが付かない。
しかし、細かく見てみると、内燃機関を持たなe-ゴルフは、エアロダイナミクス面での大きな改良を受けていることがわかる。LEDデイタイム・ランニング・ランプを含むフロント・バンバーはe-Up!のようなシェイプとなり、フロント・グリルはエアの流入を防ぐようにシャット・ダウンされている。また、アンダー・ボディも空気の流れをスムーズにするためにリデザインされ、リア・スポイラーがテールゲートの上に、そしてCピラーにもエア・ガイドが付けられる。また、リア・パンバーも新しいデザインとなっている。更に、ホイールハウスの中の乱気流を減らすために、その部分も改良されている。その結果、Cd値は0.28と、通常のゴルフよりも10%向上している。
ウォルフスブルグで生産されるe-ゴルフは、コストを抑えるために他の7代目ゴルフと同じMQBプラットフォームの上に構築される。フォルクスワーゲンは後に3ドアが追加される可能性を否定してはいないが、当初は5ドア・ハッチバックのみが生産されることとなる。
通常、ガソリンまたはディーゼル・エンジンが搭載されるスペースにマウントされているのは、社内で開発・設計・生産されるシンクロナス電気モーターだ。最大12,000rpmとなるように調整されたそのモーターは、114bhpの出力と27.5kg-mのトルクを持つ。ギアボックスはシングルスピードで、EQ270と呼ばれるもの。電源は24.2kWhのリチウム・イオン・バッテリーで、その重さは318kg。リアのブートスペースの下に配置されている。パナソニック製のこのバッテリーは、それぞれ264個のセルで構成され、232Vを発揮する。
2.3kW、240Vの充電器であれば13時間を必要とするが、プラグイン・ハイブリッド用の最高40kWの充電システムを利用すれば4時間でチャージが可能だ。
キャビン・スペースは一切犠牲にされていないが、トランク・スペースにもは通常の7代目ゴルフよりも小さくなっている。インテリアは、外観同様通常のゴルフと大きく変わりない。標準で8インチのタッチスクリーン・カラー・モニターも標準だ。但し、そのモニターには、レンジ・モニター、エネルギー・フロー、チャージ・マネージャーなどが映し出されることとなる。
■どんな感じ?
e-ゴルフはe-Up!同様に通常のクルマと同じように運転することができる。これは、一般の顧客だけでなく、レンタカー業者にとっても重要なことだ。モーターのスイッチを入れるのも、通常のイグニッション・キーを捻るのと同様だ。その後、電子ハンドブレーキを外し、ギアレバーを ”d” に入れればスタートする。オプションのデュアル・クラッチを装備したゴルフとほとんど同じ手法である。
スロットル・ペダルはやや重ためだが、コントロールは容易だ。タイヤから若干のロード・ノイズが聞こえるものの、シティ・スピードでは至って静か。スロットルのオン、オフによって活発な動きをしても、街中の速度域ではシャシーは充分に対応できる。ステアリングもフィードバックも充分で心地よいほどダイレクトだ。
またギアレバーをBにスライドさせれば、ブレーキのエネルギーをバッテリーにしまい込むこともできる。その比率も4つのステップが調整可能。D1、D2、D3、D4というこのステップはステアリング・ホイールのパドルやギアレバーによって選択できる。
ドライブ・モードも3つ用意されている。ノーマル、エコ、エコ・プラスの3つで、それぞれモーターの発するパワーが、最大114bhp、94bhp、74bhpに制限されるというものだ。
総じてパフォーマンスにはほとんど不満がない。27.5kg-mのトルクは、0−60km/h加速4.2秒というタイムで、しかも全く継ぎ目のないスムーズな加速を示してくれる。街中ではGTIよりも速いと感じるほどだ。
さすがに0-100km/hとなるとタイムが落ちるが、その原因のひとつは2.0TDIより230kg重い1510kgというボディ・ウエイトが影響しているのだろう。しかし、e-ゴルフは絶対的に遅いクルマではないと断言できる。ちなみに、最高速度はエコ・プラス・モードでは90km/h、エコでは115km/hに制限され、ノーマルでは140km/hとなる。
電動のドライブラインの持つ性格は、リラックスした静かな走行に向いている。但し、205/55R16というタイヤは、このe-ゴルフには太いようで、他のゴルフよりも明らかに硬さを感じるものであった。
その電気消費量は、12.7kWh/100kmであり、公式な航続距離は190kmとアナウンスしている。しかし、フォルクスワーゲンは、現実的には130kmから190kmの間になるだろうとコメントしている。
■「買い」か?
その答えは主にどんな用途にクルマを使用するかにかかっている。もし190km以上の距離の旅行が必要だったり、強力な40kWのチャージャーが近くになければ、e-ゴルフをおすすめすることはできない。コンベンショナルなガソリンやディーゼル・ハイブリッド・モデルを買うことをおすすめする。
もし、そうでなければe-ゴルフは検討する余地がある。このフォルクスワーゲン第2の電気自動車は、素晴らしいエンジニアリングを持ち、実用的なユーザビリティを持つハッチバックだ。しかも、非常にイージー・ドライブである。
問題はその価格だ。まだ正式な発表はないが、フォルクスワーゲンはBMW i3の£25,860(410万円)を下回るとほのめかしている。
(グレッグ・ケーブル)
フォルクスワーゲンe-ゴルフ
価格 | NA |
最高速度 | 140km/h |
0-100km/h加速 | 10.4秒 |
燃費 | 12kWh/100km |
CO2排出量 | 0g/km |
乾燥重量 | 1510kg |
エンジン | モーター |
最高出力 | 114bhp |
最大トルク | 27.5kg-m |
ギアボックス | シングル・スピード |