【速さはターボSに迫る】ポルシェ・パナメーラGTS スポーツツーリスモへ試乗 MC版 前編

公開 : 2020.10.03 10:20

GTSならシンプルなシャシーが選べる

シャシー周りは、上位グレードのターボSにかなり近づいていると思われる。その反面、標準のGTSでは電子制御のアクティブ機能が削られている。必要なかったのだろう。

パナメーラ・ターボSには、最新の四輪操舵システムやアクティブ・アンチロール、電子制御のトルクベクタリング・システムなどが標準装備される。しかし、標準のGTSには備わらない。

ポルシェ・パナメーラGTS スポーツツーリスモ(欧州仕様)
ポルシェ・パナメーラGTS スポーツツーリスモ(欧州仕様)

アクティブなシステムの設定に納得できないドライバーにとっては、ありがたい仕様だと思う。ドライバーへの訴求力も、違ってくる。シンプルで純粋な、大きなグランドツアラーを欲しているなら、このGTSは絶好の選択肢となるかもしれない。

ところが、ドイツのビルスター・ベルク・サーキットで開かれたパナメーラ発表会の試乗車には、オプションでGTSに選べるすべての電子システムが盛り込まれていた。素のGTSは、確かめられなかった。

メーカーのデモ車両としては、珍しくはないことではある。ブレーキも、標準ではスチール製のディスクだが、カーボンセラミックが奢られていた。

GTSはエアサスペンションを装備するが、素のターボSと比べて車高は10mm低いとポルシェは話していた。エアサスだから、走行速度やドライビング・モードに合わせて、さらに車高を変化できる。

試乗では、アクティブ・アンチロールや四輪操舵システムは、非常に優れたチューニングが施されていると感じた。筆者の意見では、あえて選ばないという選択の必要性はないだろう。特にこの大きさと重さのクルマでは。

乗り心地や操縦性は確実に向上

これらのシステムは、992型のポルシェ991の開発段階で、かなり高質な知見を獲得しているようだ。パナメーラとも近い、純EVのタイカンの開発プロセスも大きかったはず。

タイカンは、パナメーラが基礎とするMSBプラットフォームの改良版を採用している。パナメーラの足回りも、手を加えて流用している。

ポルシェ・パナメーラGTS スポーツツーリスモ(欧州仕様)
ポルシェ・パナメーラGTS スポーツツーリスモ(欧州仕様)

フェイスリフト後のパナメーラのステアリングや乗り心地、操縦性は、確実に向上している。ボディサイズや車重を反故にする、俊敏性を得ている。ステアリングは、リニアでありつつレスポンシブ。ポルシェらしい。

エアサスペンションの乗り心地は、素晴らしく良い。柔軟に足回りが動き、路面の影響を受けにくい。ただし、フェイスリフト前でも乗り心地は良かったけれど。

アップデート後となる2021年仕様では、垂直方向の落ち着きと、姿勢制御の締りが向上している。とても効果的だし、GTS以外のパナメーラで共通する部分でもある。

高速で起伏の大きい路面を走行させても、従来以上に一貫して高い接地感が保たれる。ステアリングの感触や重さも、新次元と呼べる内容。シャシーの限界値を、より深い位置まで探ろうという気持ちにさせてくれる。

旋回性も秀逸。優れた姿勢制御と、余裕のあるグリップとトラクションで、自然に高い速度のままコーナーを抜けていく。郊外の狭い道でも、幅の広いボディを積極的に操ることができそうだ。

この続きは後編にて。

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