【販売目標たったの600台】トヨタ・グランエースの存在意義 「無くてはならない」理由を試乗で探る

公開 : 2020.09.30 05:50  更新 : 2022.03.24 21:24

シンプルなグランエースのグレード構成

グランエースのグレード構成はシートレイアウトで区別されており、走行性能や前席周りの装備面での差異はない。

基準グレードにあたるGが4列シート/8人乗りであるのに対して、プレミアムは3列シート/6人乗りとなる。

トヨタ・グランエース
トヨタ・グランエース    神村 聖

今回の試乗に供したのはプレミアムの側で、後部にはアルファードヴェルファイアの上位グレードに採用されるエグゼクティブパワーシートをベースにした独立座席が等しく4脚並べられる。

ちなみにGの場合は、このエグゼクティブパワーシートが2脚、マニュアルのキャプテンシートが2脚、そして最後列には6:4可倒のベンチシートが並べられるかたちとなる。

エンジン/トランスミッションは1種類

エンジンはランクル・プラドにも搭載される1GD−FTV型直噴ディーゼルターボのみ。2.8L 4気筒のそれは、177ps/45.9kg-mを発揮する。

ミッションは6速AT、駆動方式はFRのみと至ってシンプルだ。

トヨタ・グランエースのエンジン。
トヨタ・グランエースのエンジン。    神村 聖

グランエースの先進運転支援システム

ADAS(先進運転支援システム)系はプリクラッシュセーフティやレーンキープアシスト、ブラインドスポットモニターやリアクロストラフィックブレーキなとほぼフルスペックとなるが、レーダークルーズコントロールについては手動式サイドブレーキのため、30km/h以下の追従機能はない。

視界周りもパノラミックビューカメラやデジタルルームミラーなどで死角確認をしっかり補完している。

アップル・カープレイやアンドロイド・オートに対応する8インチのディスプレイオーディオも備わる。
アップル・カープレイやアンドロイド・オートに対応する8インチのディスプレイオーディオも備わる。    神村 聖

また、アップル・カープレイやアンドロイド・オートに対応する8インチのディスプレイオーディオも備わるなど、法人需要前提の割に装備面は相当充実しているという印象だ。

グランエースに試乗した印象は?

日本の路上にいればその巨大さにちょっとたじろぐグランエースだが、国際的にみればちょっと大型のバンとしてほぼど真ん中のところにいる。

海外勢を見渡すと、日本では受注販売となっているメルセデス・ベンツVクラスのエクストラロングにサイズはほど近い。

国際的にみればちょっと大型のバンとしてほぼど真ん中。日本では受注販売となっているメルセデス・ベンツVクラスのエクストラロングにサイズはほど近い。
国際的にみればちょっと大型のバンとしてほぼど真ん中。日本では受注販売となっているメルセデス・ベンツVクラスのエクストラロングにサイズはほど近い。    神村 聖

それでも最小回転半径は5.6mと小さく、取り回しにさほど苦にならない辺りはさすがだ。

FFベースのミニバンと違ってフルフレーム構造のため、上屋に入るには高床の乗降感が伴うが、ステップやグリップはしっかりと配されているおかげで極端な窮屈さはない。

室内高はアルファードより110mm低いが、身長181cmの筆者が座っても天井の低さは感じなかった。

後ろ4席の掛け心地は等しく、左右席間が若干異なるのみだ。各々自在に電動スライドとリクライニングが可能だが、前側のシートがっつり倒してオットマンを使うような状況になると、さすがにその後ろの席は座り辛い。

もっとも、フルリクライニング状態で走ることは万一の衝突時などに余計な危険も伴うので、こういった機能は自制心をもって扱うことが重要だ。

後席にいて感心させられたのは、2列目と3列目とで乗り心地の差異が想像以上に小さかったことだ。

サスペンション全体のセットアップを柔らかめに躾けたほか、後軸側にはコイル式のトレーリングリンクを採用、周波数感応型のダンパーや制振材の多用など、音/振動関係の対策は多岐にわたっている。

また、シャシー構造の恩恵もあってか、最後列にいても不快な突き上げなどは極力封じ込められている。

床板周りの振動特性などはアルファード&ヴェルファイア以上と思わせるほどだ。

記事に関わった人々

  • 渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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