メルセデス・ベンツSL63AMG

公開 : 2012.05.01 13:44　　更新 : 2017.05.23 16:46

■どんなクルマ？

決してエレガントとはいえないが第2世代のメルセデス・ベンツSL63AMGのルックスからは本気を感じられる。実際、ヘッドライトは滑稽なほど大きいが、そのスタイリングに熟考を重ねるよりも、最新のテクノロジーを提供することこそが優先された結果なのだろう。

最新のAMGモデルは、前モデルのスチール・ボディに対して125kgも軽量化されたアルミニウム・ボディをベースとしている。

エンジンはツインターボを備える5.5リッターのダイレクト・イグニッションV8で、パフォーマンスとハンドリングのポテンシャルを上げることに寄与している。そのパワーは11bhpあがり529bhp、オプションのパフォーマンス・パッケージを選べば更に27bhpあがり556bhpになる。パワー・ウエイト・レシオは、旧モデルよりも30bhp/トンも上がった314bhp/トンとなっている。また、トルクはスタンダードで10.1kg-m、パフォーマンス・パッケージでは27.5kg-m上がっていて、91.7kg-mという値。トルク・ウエイト・レシオは51.8kg-m/トンとなっている。

■どんな感じ？

コンフォートとスポーツ、2つのモードが選ぶことができる。コンフォート・モードは、オールラウンドでしなやかさを重視したセッティングで、フレキシビリティ溢れるエンジンのお陰で、街中でのパート・スロットルにも十分に対応できる。

一方、スポーツ・モードでは、より鋭いスロットルとステアリング・レスポンスが与えられ、より固くなったスプリングとダンパー・セッティングにより、ダイナミックな性能が向上する。更にAMGモードでは、ESPがリマップされ、その介在を遅らせることが可能だ。

ターボチャージャーの奏でるサウンドは抑えられてはいるが、それでもハードに攻めるとNASCARのようなサウンドを発する。但し、スロットルを踏み込むと、エグゾースト・ガスの渦がドライバーを襲う。素晴らしい構造のアルミニムののルーフを畳むと、なおさらだ。

加速は非人間的というほどに凄まじいし、グリップも強力だ。また、オプションのパフォーマンス・パッケージに装着されるカーボン・セラミックスのブレーキは、息をのむような制動力を提供してくれる。

これらの点においては、間違いなくSL63 AMGはスーパーカーである。

但し、論争の的となるのはギアボックスだ。メルセデスの7速オートマチックは、反応がやや遅いのだ。ギアシフトそのもの自体は速い。しかし、パドルを操作してから、ギアシフトを行うまでにタイムラグがあるのである。

SL63AMGのアルミニウム・ボディは、スタンダートなSLとは別の、専用のアクティブ・ボディ・コントロールを備える。このアクティブ・ボディ・コントロールは、モードやスピードによって車高が変わるもので、波打った道やコーナーの途中でもピッチやロールが非常に良く収束されている。フロント・エンドは良くグリップし、リアはパフォーマンス・パッケージにオプションのロッキング・デフが上手く動作しているといった印象だ。

その限界は極めて高い。フロントが50mm、リアが52mm広がったトレッドと、フロントが255/35の19インチ、リアが285/30の20インチのタイヤによる影響も少なくない。最調整されたESPシステムを持つAMGモードでも、限界付近での扱いは容易だ。

問題はステアリングにある。エレクトロ・メカニカル・システムは、線形でダイレクトで、ターン・インの時に急激に倒れこむような感触があるのだ。また、フィードバックも少ないのも気になった。

インテリアのついては、センターコンソールのコントロール類の位置に疑問を持った。低くセットされているが、そのドライビング・ポジションはパーフェクトではない。というのも、肘が高いセンターコンソールにあたってしまうのである。

■「買い」か？

人気のない裏道だろうが、ロング・ツーリングだろうが、SL63AMGは素晴らしいエンジンとそのサウンドで本当に素晴らしいドライビングを提供してくれるクルマだ。しかし、ギアボックスに関しては失望を覚えざるを得ない。フィーリングがあまりに欠乏しているからだ。また、ビジュアル面におけるアピールも少ないのが気になったところだ。

(グレック・ケーブル)