【とにかくよく見る】小さなSUV、なぜ売れる 人気車に共通の傾向 原点回帰の流行 価格以外の魅力も

公開 : 2020.10.06 05:50  更新 : 2021.10.22 10:14

古典的な悪路向けSUV回帰の傾向も

一方、スズキの販売店では、ジムニーとジムニー・シエラについて以下のように述べている。

「ジムニーとジムニー・シエラの納期は、発売直後に約1年に達しました。そこで生産規模を拡大しましたが、なかなか縮まりません」

「現行型は外観のデザインが従来型以上に人気を高めています」

ジムニー&ジムニー・シエラについても、ライズ&ロッキーと同様、外観の野性味とカッコ良さが注目されている。

もともとSUVは、大径タイヤなどによって外観に存在感があり、ワゴン風のボディで居住性や積載性も優れているために人気を得た。

ただし今は都会的なデザインのSUVが急増して、没個性の印象も受ける。そこで外観については、古典的な悪路向けのSUVに回帰する傾向が見られ始めた。

ライズ&ロッキーとジムニー&ジムニー・シエラは、この動向を踏まえた上で、日本で求められるコンパクトなサイズも満たしたからさらに人気を高めた。

高額化で200万円に収まる価格に共感

前述のトヨタの販売店からは、ライズの需要に「コンパクトカーからの乗り替えと、上級車種からのダウンサイジングがある」という話を聞けた。

コンパクトカーからの乗り替えがあるなら、コンパクトSUVが人気を得た理由として、価格の割安感もあるだろう。

例えばライズであれば、主力グレードになる2WD・Gは189万5000円だ。

コンパクトカーのヤリス2WD・1.5Gが175万6000円だから、ライズは若干高いものの同等の予算で購入できる。

軽自動車のジムニーは、全車が4WDを搭載して、最上級グレードのXCが187万5500円だ。

小型車のジムニー・シエラも4WDを搭載してJCは205万7000円になる。いずれの価格も180〜200万円前後に収まる。

今は安全装備の充実や環境性能の向上によって、クルマの価格が全般的に上昇した。ミドルサイズSUVで人気の高いエクストレイルは、2Lノーマルエンジンを搭載する2WDのXi(2列シート)が304万5900円、4WDは325万6000円だ。

RAV4も人気の高い2Lノーマルエンジン搭載の4WDアドベンチャーが331万円になる。最も安価な2WD・Xでも274万3000円だ。

「お客様に購入予算を尋ねると、車両価格が200万円前後と返答する方も多いです」(販売店)

「昔から200万円が1つの基準で、今でも続いています」

300万円を超えるRAV4やエクストレイルが堅調に売れる一方で、200万円を想定するユーザーも多く、この予算にピッタリと収まるのがコンパクトSUVだ。

つまりクルマの価格が全般的に高まった結果、ライズ&ロッキーやジムニー&ジムニー・シエラが注目されている事情もある。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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